KADOKAWA Technology Review
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SHINSUKE SUGINO
IU35 Japan Summit 2024: Nobuyuki Yoshioka

「量子コンピューターの用途解明、新たな応用へ」吉岡信行

MITテクノロジーレビュー「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」から、東京大学所属の吉岡信行氏のプレゼンテーションの内容を要約して紹介する。 by MIT Technology Review Japan2025.02.07

MITテクノロジーレビューは2024年11月20日、「Innovators Under 35 Japan Summit 2024」を開催した。Innovators Under 35は、テクノロジーを用いて世界的な課題解決に取り組む若きイノベーターの発掘、支援を目的とするアワード。5 回目の開催となる本年度は、国内外で活躍する35歳未満の起業家や研究者など10名のイノベーターを選出した。

その受賞者が集う本サミットでは、各受賞者が自らの活動内容とその思い、今後の抱負を3分間で語った。プレゼンテーションの内容を要約して紹介する。なお、吉岡氏は学会発表のため当日はビデオでプレゼンを実施した。

吉岡 信行(東京大学)

量子技術の研究開発が加速する中、なぜ私たちはこれらの技術を必要としているのでしょうか。その背景には、科学計算や量子データの機械学習、量子もつれを活用した量子通信など、従来のコンピューターを超える効率での情報処理への期待があります。私は科学者として、いつ、どのような問題でそれが起きるのかを知りたい。また、その時期をできるだけ早めることを目標に研究を進めています。
現在実用化されている量子コンピューターは約100個の量子ビット(演算装置)を内蔵しています。しかし、最も有名な応用例である「ショアのアルゴリズム」による暗号解読には、1000万個以上の量子ビットが必要とされています。現状の規模からすると、まだ大きな隔たりがありますが、集積化技術の進歩により、着実に発展を遂げています。
私たちの研究により、今後数年で実現が期待される10万から100万量子ビット規模のデバイスには、量子物理シミュレーションが適切な応用領域であることが明らかになりました。これにより、化学計算分野での実用化が視野に入ってきています。今後の目標は、必要な量子ビット数をさらに削減することと、新たな応用分野を開拓することです。
従来のコンピューターの歴史を振り返ると、20世紀中頃までは大企業や国立研究所による利用が中心でしたが、性能向上とともに人工知能、暗号通貨、インターネットといった想定外の産業応用が生まれました。量子コンピューターについても、より多くの人々がデバイスを使用することで、新しい概念や技術が生まれることを期待しています。そうした革新の土壌を形成し、自らもリードしていきたいと考えています。

 

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MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]日本版 編集部
MITテクノロジーレビュー(日本版)編集部
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本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

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日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

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