MITがナトリウム燃料電池を開発、エネルギー密度はリチウムの4倍
ナトリウムを燃料とする新型の燃料電池をMITの研究チームが開発した。リチウムイオン電池よりもエネルギー密度が高く、水素燃料電池のような極低温や高圧を必要としないのが特徴。輸送分野での実用化を目指す。 by Casey Crownhart2025.05.29
- この記事の3つのポイント
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- ナトリウム金属を燃料とする新型燃料電池が開発された
- この燃料電池は高いエネルギー密度を持ち小型化が可能だ
- 鉄道や地域航空機などの動力源としての利用が期待されている
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、ナトリウム金属を燃料とする新型燃料電池を開発した。鉄道や地域航空、短距離海運など、化石燃料からの転換が困難な分野において、将来的に環境負荷の低減に貢献する可能性がある。この電池はリチウムベースの電池技術とは一線を画し、概念的には水素燃料電池システムに近い。
開発したのは、MITの材料科学・工学教授であるイェット‐ミン・チェンが率いるチーム。リチウムイオン電池よりもエネルギー密度が高く、水素燃料電池のような極低温や高圧を必要としないため、輸送用途においてより実用的な可能性がある。チェン教授は、「ナトリウム金属を将来のエネルギーキャリアとして注目しています」と語る。
2025年5月27日付けで学術誌『ジュール(Joule)』に掲載されたこのデバイスの設計は、チェン教授が共同創業した企業の1つであるフォーム・エナジー(Form Energy)の技術に関連している。フォーム・エナジーは、送電網における風力発電や太陽光発電の蓄電を支援するような大規模エネルギー貯蔵設備向けに、水、鉄、空気を利用する鉄空気電池を開発している企業だ。
金属空気電池において、これまで技術的な課題とされてきたのは反応の可逆性だ。電池の化学反応は、一方向では電気を発生させて放電し、もう一方向では電気をセルに送り込んで逆反応を起こして充電するというように、容易に逆転できる必要がある。
電池の反応が非常に安定した生成物を作り出す場合、容量を損なわずに電池を再充電することが困難になる場合がある。この問題を回避するため、フォーム・エナジーのチームは、電池を再充電可能にするのではなく、燃料を再充填可能にする方法について議論を重ねたとチェン教授は述べる。反応を逆転させるのではなく、システムを一方向に動作させ、反応の出発物質を追加して繰り返すというアイデアだ。
最終的にフォーム・エナジーは従来型に近い電池の設計を選択したが、このアイデアはチェン教授の心に残った。他の金属でこのアイデアを探求することにし、ナトリウムを使った燃料電池の構想にたどり着いた。
この燃料電池では、装置が化学物質を取り込み、発電反応を起こした後、生成物が …
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