AIのエネルギー消費、
本誌徹底調査で分かった
その知られざる事実
私たちが利用するAIによるテキストや画像、動画の生成で排出される温室効果ガスは、ごくわずかに見えるかもしれない。だが、業界が追跡していない総量を合算し、今後の展開を考慮すれば、その影響は無視できないものとなる。 by Casey Crownhart2025.06.05
人工知能(AI)が私たちの生活に統合されることは、過去10年間でもっとも大きなオンライン・ライフの変革である。現在、何億人もの人々が宿題や調査、コーディング、さらには画像や動画の作成のために、日常的にチャットボットを利用している。だが、それらを支えているのは一体何なのか?
このほどMITテクノロジーレビューが発表する新たな分析は、AI産業が消費するエネルギー量について、1回のクエリに至るまで前例のない包括的な視点を提供し、そのカーボンフットプリントが現在どの段階にあり、今後どこに向かうのかを明らかにするものだ。AIが数十億人規模のユーザーを日々抱える時代へと突き進む中、その全容が浮かび上がってきた。
MITテクノロジーレビューはAIのエネルギー需要を測定する24人の専門家に取材し、さまざまなAIモデルとクエリを評価し、数百ページに及ぶ予測と報告書を読み込み、さらに主要なAIモデル開発企業に将来の計画について取材した。その結果、AIのエネルギー消費に関する一般的な理解には、数多くの見落としや誤解があることが明らかになった。
調査は、「AIに投げる1回のクエリにどれだけのエネルギーがかかるのか」という小さな疑問から始まった。なぜなら、こうしたクエリは単なるチャットボットにとどまらず、検索やエージェント、さらには日常的に使われるフィットネス管理、オンライン・ショッピング、航空券の予約といったアプリにも組み込まれているからだ。このAI革命を支えるために必要なエネルギー資源は膨大であり、世界の大手テック企業はそれをいかに確保するかを最優先課題としている。そしてその動きは、エネルギー供給網の再構築にまでつながろうとしている。
メタ(Meta)とマイクロソフトは、新たな原子力発電所の建設に向けて動いている。オープンAI(OpenAI)など複数の企業とドナルド・トランプ大統領は「スターゲート(Stargate)」構想を発表し、最大10カ所のデータセンター建設に5000億ドルを投資する計画だ(各センターは、ニューハンプシャー州全体の電力需要を上回る5ギガワットを必要とする可能性がある)。アップルは、今後4年間で米国内の製造・データセンター施設に5000億ドルを投資する計画を明らかにしている。グーグルは、2025年にAIインフラだけで750億ドルを投資する予定だ。
単にデジタル化が進むことで電力需要が増えるわけではない。これはAI特有の現象であり、近年の巨大テック企業による電力消費パターンからの顕著な逸脱である。2005年から2017年にかけて、フェイスブックからネットフリックス(Netflix)に至るまで、クラウド型オンライン・サービスの台頭に対応すべく、多数のデータセンターが建設されている。にもかかわらず …
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