遺伝子編集ベビー研究に3000万ドル、タブーに挑む米新興企業が始動
米国のバイオテック起業家が、遺伝子編集ベビーの安全性研究に3000万ドルを確保し、スタートアップを立ち上げた。「我々の時代で最も重要な健康技術の一つ」と主張する一方、主流科学者は「危険で誤った方向性」と批判。タブー視された技術をめぐる議論が再燃しそうだ。 by Antonio Regalado2025.11.06
- この記事の3つのポイント
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- 米バイオテック起業家が遺伝子編集赤ちゃんの安全性研究に3000万ドル投資を発表した
- タブー視される技術だが疾患予防への期待から暗号通貨業界等も関心を示している
- 主流科学者は強く反対しており実用化への道筋は不透明な状況が続いている
米西海岸のバイオテック起業家が、遺伝子編集された赤ちゃんを安全に作る方法を研究するため、公益法人の設立費用として3000万ドルを確保したと発表した。タブー視されてきた技術への最大規模の投資となる。
プレベンティブ(Preventive)と呼ばれるこの新会社は、いわゆる「遺伝性ゲノム編集」の研究を目的として設立される。この技術では、有害な変異を修正したり、有益な遺伝子を導入することで胚のDNAを改変する。目標は疾患の予防である。
プレベンティブは、遺伝子編集科学者のルーカス・ハリントンによって設立された。ハリントンは10月30日、この事業を発表するブログ投稿で自身の計画を説明した。プレベンティブは技術の実用化を急ぐのではなく、「遺伝性ゲノム編集が安全かつ責任を持って実施可能かどうかを厳密に研究すること」に専念すると述べている。
遺伝子編集された人間の作成は依然として議論の的であり、中国で最初にこれを行った科学者は3年間の禁錮刑を受けた。この手法は、米国を含む多くの国で現在も違法であり、医学的治療法としての有用性にも疑問が呈されている。
それでも、遺伝子編集技術が急速に進歩する中で、種の未来を形作るという誘惑は、特に人間の在り方に自らの刻印を残したいと願う起業家にとって、抗しがたいものになるかもしれない。理論的には、わずかな遺伝的改変でも、心疾患やアルツハイマー病にかからない人々を作り出し、そうした形質を子孫に受け継がせることが可能になる。
ハリントンによれば、この技術が安全であると証明されれば、「我々の時代における最も重要な健康技術の一つになり得る」という。彼は、胚の編集にかかる費用は約5000ドルと見積もっており、将来的には規制が変わる可能性があると見ている。
プレベンティブは、今年、遺伝子編集された赤ちゃんを作る技術を追求する意思を表明した米国のスタートアップとして3社目にあたる。最初のブートストラップ・バイオ(Bootstrap Bio)はカリフォルニア州に拠点を置き、シード資金を募集中で、知能の向上に関心を持っているとされている。もう1社のマンハッタン・ゲノミクス(Manhattan Genomics)は現在設立段階にあるが、資金調達についてはまだ発表していない。
現時点では、これらの企業はいずれも重要な人員や施設を有しておらず、主流の遺伝子編集科学者の間では信頼性に欠けている。カリフォルニ …
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