空からゴミが降ってくる——
衛星10万基時代のリスク、
航空への影響は?【解説】
フロリダの住宅屋根を貫通した金属片、ポーランドの倉庫近くに落下したロケット破片。人工衛星が現在の1万2900基から10年後には10万基に急増する中、宇宙ゴミの落下が日常化し、航空機への衝突リスクも上昇している。 by Tereza Pultarova2025.11.19
- この記事の3つのポイント
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- スペースデブリの大気圏突入が現在1日3個から2030年代半ばには数十個に急増する見込み
- 軌道上衛星数が10年後に10万基へ激増することでデブリ落下リスクが指数関数的に拡大
- 航空機への年間衝突確率は2035年に1万分の7と予測され、新たな安全対策が急務
10月中旬、謎の物体がユタ州上空3万6000フィートを巡航していた満席のボーイング737のフロントガラスをひび割れさせ、パイロットたちは緊急着陸を余儀なくされた。インターネット上では、その飛行機がスペースデブリ(宇宙ゴミ)の破片に衝突したのではないかとの憶測が急速に広がった。その飛行機に何が衝突したのかは今も正確にはわかっていない。おそらく気象観測気球の残骸だと見られているが、ネット上の憶測は必ずしも的外れではないかもしれない。
なぜなら、飛行機がデブリに衝突するリスクは依然として低いものの、実際に増加しているからだ。
欧州宇宙機関(ESA)の推定によると、使用済みロケットや機能停止した衛星など、老朽化した宇宙機器の破片が1日あたり約3個、地球の大気圏に突入している。2030年代半ばまでには、この数が数十個に達する可能性がある。この増加は、軌道上の衛星数の急増と関連している。現在、地球の周囲には約1万2900基の稼働中の衛星が周回しており、アナリストの推定によれば、10年後にはその数が10万基に達する可能性があるという。
軌道上での衝突リスクを最小限に抑えるため、運用者は古い衛星を大気圏で燃え尽きるよう誘導している。しかし、その再突入過程における物理学はまだ十分に解明されておらず、どれだけの物質が燃え尽き、どれだけが地上に到達するかは明らかになっていない。
「このような地上落下事象の数は増加しています」。こう話すのは、南アフリカのフリーステート大学の物理学教授で、スペースデブリのリスクに関する最近の論文の共著者であるリチャード・オカヤだ。「今後数年間で指数関数的に増加する可能性があると予想しています」と言う。
これまでのところ、スペースデブリによって、空中でも地上でも人が負傷した例は報告されていない。しかし、近年はいくつものニアミスが報告されている。昨年3月には、重さ0.7キログラムの金属片がフロリダ州の住宅の屋根を貫通した。この物体は、国際宇宙ステーション(ISS)から投棄されたバッテリーパレットの破片であることが後に確認された。衝突時、住宅の19歳の息子は隣の部屋で休んでいた。
そして今年2月には、スペースX(SpaceX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットの長さ1.5メートルの破片が、ポーランド第5の都市であるポズナン郊外の倉庫近くに落下した。別の破片は近くの森で見つかった。1カ月後、Starlink(スターリンク)衛星の重さ2.5キログラムの破片がカナダのサスカチュワン州の農場に落下した。ほかにもオーストラリアやアフリカで同様の事例が報告されており、さらに多くの事例が完全に見過ごされている可能性がある。
「もしどこかの森で焼けた電子機器の塊を見つけたとしても、それが宇宙船から来たものだとは最初に思わないでしょう」。英国を拠点とする宇宙工学研究会社ベルステッド・リサーチ(Belstead Research)のジェームズ・ …
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