20年間、独裁国家を追った研究者は今、米国を監視している
シチズン・ラボ所長ロナルド・ダイバートは2001年以来、中国のスパイネットワークの存在や、暗殺されたジャーナリスト周辺のスマホのハッキングなど、世界の権威主義の行動を監視してきた。しかし今、「かつて民主主義のベンチマークだった米国が、今や監視の対象」だと彼は言う。 by Finian Hazen2026.01.06
- この記事の3つのポイント
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- シチズン・ラボは中国のゴーストネット等を暴露し、世界的なデジタル監視の脅威を公益のために調査する稀有な独立機関として活動
- トロント大学を拠点とする同ラボは政府・企業から独立し、過去20年間で最悪のデジタル濫用事例を数多く明らかにしてきた
- 米国の民主主義的規範の後退により、独立した監視研究機関の存続が困難になりつつあると創設者ダイバートは警鐘を鳴らす
2025年4月、ロナルド・ダイバートはカナダ・トロントの自宅にすべての電子機器を置いて飛行機に搭乗した。米国イリノイ州に到着すると、タクシーでモールに向かい、アップルストアに直行して新しいノートパソコンとアイフォーン(iPhone)を購入した。個人の機器が没収されるリスクを最小限に抑えたかったのだ。自分の仕事が監視の格好の標的になることを知っていたからである。「私は監視されているという前提で移動しています。今この瞬間にどこにいるかまで正確に把握されているという前提です」。ダイバートは言う。
ダイバートは、2001年に自ら設立した研究センターであるシチズン・ラボ(Citizen Lab)を指揮している。同ラボは「市民社会のための防諜機関」として機能することを目的としている。トロント大学に拠点を置くこのラボは、政府や企業の利害から独立して運営され、研究助成金と民間の慈善事業による資金援助に依存している。公益のためだけにサイバー脅威を調査する数少ない機関の1つであり、過去20年間で最も悪質なデジタル濫用の一部を暴露してきた。
長年にわたり、ダイバートたちは米国を自由民主主義の基準として掲げてきた。しかし、それが変わりつつあると彼は言う。「民主主義の柱が米国で攻撃を受けています。数十年間、欠陥はあったものの、米国は立憲民主主義がどのようなものか、あるいはどうあるべきかについての規範を維持してきました。それが今、危険にさらされています」。
カナダ人の同胞の一部がドナルド・トランプの2度目の当選後に米国への渡航を避ける中、ダイバートは訪問の機会を喜んで受け入れた。人権擁護者との会合と並行して、学生抗議活動が最高潮に達していたコロンビア大学での積極的な監視活動も記録した。ダイバートはキャンパス上空のドローンの写真を撮り、異様に厳格な警備体制を記録した。「米国に行くのは型破りなことでした。しかし、私は世界の問題に本当に引き寄せられるのです」。
61歳のダイバートは、ブリティッシュコロンビア州イーストバンクーバーで育った。そこは荒々しい地域で、カウンターカルチャーで活気に満ちていた。1970年代、バンクーバーは徴兵忌避者やヒッピーで溢れていたが、ダイバートは、コンテルプロ(COINTELPRO)監視プログラムやペンタゴン・ペーパーズ(日本版注:ベトナム戦争の経緯を記した米国の機密文書)、ウォーターゲート事件を暴露した米国の調査報道を反体制感情への敬意の種として挙げている。しかし、こうした興味がキャリアにつながるとは想像していなかった。
「労働者階級の家庭出身で、家族の中で大学に進学した人は誰もいなかったため、私の視野はかなり狭かったのです」。
ダイバートは最終的にブリティッシュコロンビア大学の国際関係学大学院プログラムに入学した。博士課程の研究により、間もなく爆発的に発展する研究分野に導かれた。それは初期のインターネットの地政学的含意だった。
「私の分野では、インターネットについて話し始める人がほんの一握りいましたが、非常に浅薄で、私はいらだ …
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