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悲劇から13年、浄化が進むバングラデシュ・アパレル産業の矛盾
Zakir Hossain Chowdhury
Bangladesh’s garment-making industry is getting greener

悲劇から13年、浄化が進むバングラデシュ・アパレル産業の矛盾

1134人が死亡した2013年のラナ・プラザ崩壊から13年。バングラデシュのアパレル産業は変貌を遂げた。環境性能評価認証工場の数は世界トップクラスとなり、太陽光発電や廃水処理の導入が進む。だが、労働者の待遇改善はまだ不十分だ。 by Zakir Hossain Chowdhury2026.01.06

この記事の3つのポイント
  1. バングラデシュは268カ所のLEED認証工場を有し世界最多のグリーン工場リーダーに変貌
  2. かつて環境汚染と労働災害で悪名高かったアパレル産業が持続可能性重視へ転換
  3. 小規模工場の資金不足と労働者待遇改善の遅れが今後の課題として残存
summarized by Claude 3

繊維生産による汚染物質——染料、化学物質、鉛やカドミウムなどの重金属——は、バングラデシュのダッカを流れるブリガンガ川の水域でよく見られる。これは、かつて悲劇の代名詞だったアパレル産業がもたらす多くの害の1つである。2013年、8階建てのラナ・プラザ工場ビルが倒壊し、1134人が死亡、約2500人が負傷した。

colored water pouring out of a cement tunnel into a river with a city in the far distance
バングラデシュのアパレル産業からの廃水がブリガンガ川に流れ込んでいる。

しかし、状況は変わり始めている。近年、バングラデシュは静かに、廃棄物を削減し、水を節約し、気候変動の影響や世界的なサプライチェーンの混乱に対する回復力(レジリエンス)を構築するために、資源効率的な技術の組み合わせを使用する「フルーガル(frugal)工場」の意外なリーダーとなっている。バングラデシュには現在、268カ所のLEED認証衣料品工場がある(LEEDは米国グリーンビルディング協会による環境性能評価認証)。これは他のどの国よりも多い。染色工場はより安全な化学物質を使用し、皮革工場はよりクリーンな鞣(なめ)し方法を採用し、廃水を処理し、作業場はより効率的なLED照明に切り替え、屋根には太陽光パネルが輝いている。ブリガンガ川沿いやバングラデシュ各地にある何百もの工場が、より環境に優しい糸で新たな物語を紡ぎ始めているのだ。

a single factory worker in the midst of many workstation tables under industrial lighting fixtures
バングラデシュの首都近くのファキール・エコ・ニットウェア工場にあるこれらのエネルギー効率的で自動化されたテンプレート縫製機械は、作業者の廃棄物削減を支援している。

ダッカ近郊の都市ナラヤンガンジにあるファキール・エコ・ニットウェア(Fakir Eco Knitwears)のLEEDゴールド認証工場では、天窓によって照明用の電力消費を40%削減し、AI駆動の裁断機によって布の端切れの95%を新しい糸へとリサイクルする。「私たちは重いエアコンやボイラーの代わりに、日光、太陽光発電、雨水を利用してエネルギーを節約しています」と、同社のエンジニアであるMd. アニスザマンは語る。「地域資源が、いかに生産をよりグリーンで持続可能にできるかを示しています」。

バングラデシュにおけるグリーン工場への転換は、工場を運営する企業自らの投資、バングラデシュ銀行のグリーン・トランスフォーメーション基金からの融資、そしてコンプライアンスを重視する工場に対して継続的な取引で報いる国際的なバイヤーからの圧力という組み合わせによって賄われている。著名な取り組みの1つが、世界銀行グループの国際金融公社が運営する「クリーンな繊維のためのパートナーシップ(PaCT)」である。2013年に開始されたPaCTは、クリーンな生産手法に関して450以上の工場と連携してきた。この取り組みによって年間350億リットルの淡水が節約されており、これは約190万人分の年間の生活用水に相当する量である。

工場の下水処理場で再生された水は、施設のトイレで使用されている。

 

良いスタートではあるものの、バングラデシュの400億ドル規模のアパレル産業には、依然として長い道のりが残されている。工場レベルでの環境対策への取り組みは、この業界で働く440万人の労働者の待遇改善には必ずしも結びついていない。

賃金の窃取や支払いの遅延はいまだに横行している。最低賃金は月額約1万2500タカ(約113ドル)で、労働組合が提案する200ドルを大きく下回り、賃金、残業、雇用保障をめぐるストライキや抗議が頻発している。「ラナ・プラザ以降、建物の安全性や工場の環境は改善されましたが、根本的な考え方は変わっていません」。非営利の労働者権利団体バングラデシュ労働財団のA.K.M. アシュラフ・ウッディン事務局長は語る。「依然として利益が最優先で、労働者の言論の自由はいまだに保障されていないのです」。

衣料品セクターを支配する小規模工場は、グリーンなアップグレードへの投資に苦労する可能性がある。

 

最悪の場合、こうした産業慣行の改善が実際には不平等を悪化させる恐れがある。アパレル産業の大部分を占める小規模工場は、設備の近代化に必要な資金を確保するのが困難だ。しかし、これらのアップグレードをしなければ、一部の市場からは締め出される可能性がある。その一例が欧州連合(EU)で、2027年から企業に対し、サプライチェーンにおける人権および環境問題への対応を義務付ける予定である。きれいになったブリガンガ川は、必要とされる膨大な変革のごく一部にすぎないのだ。

ザキル・ホサイン・チョウドリーは、バングラデシュを拠点とするビジュアル・ジャーナリストである。

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