KADOKAWA Technology Review
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Algorithms Probably Caused a Flash Crash of the British Pound

英ポンドの瞬間暴落
原因にツイッターが浮上

取引ソフトウェアがイギリスのEU離脱に関するフランス大統領のコメントに関するツイートに過剰反応している可能性が浮上した。 by Jamie Condliffe2016.10.10

10月6日、一夜にして英ポンドが6%下落し、対米ドルで1ポンド1.26ドルから1.13ドルに急落した。アナリストらはよくある金融のスケープゴートをやり玉にあげている。アルゴリズムだ。

暴落は確実にアルゴリズム取引と関係があると決まったわけではないが、エコノミスト誌によると、10月6日の急落はソフトウェアが暴走したからだという。トリガーポイントがあればソフトウェアが売りを仕掛け、値が下がると、今度は別のプログラムのトリガーポイントが作動する金融アルゴリズム(取引アルゴリズム)は、高速に売りのスパイラルに陥ることがある。この動作が繰り返されれば、結果として大参事に至るわけだ。

今回の例では、トリガーはインターネットそのものから来たのかもしれない。ビジネス・インサイダーは金融仲介機関シティ・インデックス研究所のキャスリン・ブルックス所長の以下の仮説を掲載している

The British pound got hammered in June as a result of the Brexit vote.
英ポンドはEU離脱投票の結果、6月にも暴落した

「最近では、ニュースサイトから情報を得るアルゴリズム取引があり、ツイッターなどのソーシャルメディアでの流行を察知するアルゴリズムすらある。(略)こうしたアルゴリズムは明らかに悪質であり、テリーザ・メイらが強行的なEU離脱(Brexit)を望んだ場合、Brexitが強行されるといったフランソワ・オランド仏大統領のコメントを拾い上げ(今回の)急落を引き起こしたのだ。」

暴落時に開いていた市場はアジアとオセアニアだけだった。ガーディアン紙が指摘しているとおり、薄商いだったのだ。というのは、トレーダーは米雇用統計を見定めようとしていたからだ。市場が手薄な中で、EU離脱(Brixit)のニュースに関連した奇妙な取引があったことで、通常よりも影響が大きくなったのかもしれない。

ポンドの下落は最終的には止まり、対米ドルで1ポンド1.24ドル付近にまで値を戻した 。ほぼ瞬間暴落前の値だが、今週初めには30年ぶりの安値を付けている。英国の欧州連合を離脱する国民投票に続くものだ

これは何が何でもアルゴリズムのせいだというほど劇的な暴落ではなかった。2010年には、ソフトウェア運用による売却が過激化した結果、米株式市場が数分間で1000ポイント下落した。以来、市場関係者は同じことを繰り返さないように細心の注意を払っている。はっきり言えるのは、問題はまだ解決していないことだ。

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クレジット Anthony Wallace | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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