フラッシュ2023年5月24日
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腸内微生物叢のシーケンシング・データから性別や属性を推定
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]大阪大学、理化学研究所、東京大学、愛知県がんセンター、吹田市民病院、大阪南医療センターの研究グループは、ヒトの腸内微生物叢のシーケンシング・データに含まれるわずかなヒトゲノム由来配列情報から、個人の遺伝子多型情報を再構築することに成功した。
研究グループはまず、腸内微生物叢シーケンシング・データに含まれるヒトゲノム由来配列のうち、ヒトのX・Y染色体に由来するものを利用して性別を推定。343名の訓練用データセットで訓練したロジスティック回帰モデルを利用して、113名分のデータを解析したところ、97.3%の確率で成功した。
続いて、腸内微生物叢シーケンシング・データ中のヒトゲノム由来配列と、同一個人に由来する遺伝子多型データを紐付けることができるか検証した。343名分のシーケンシング・データと遺伝子多型データを使って検証したところ、93.3%の確率で紐付けることができた。個人が属する人種集団を推定する検証でも、80〜98%の正答率が得られたという。
研究チームはさらに、高深度腸内微生物叢シーケンシング・データ中のヒトゲノム由来配列から、遺伝子多型情報を取得した。高深度腸内微生物叢シーケンシング・データ中のヒトゲノム由来配列の量は、一般的なヒト全ゲノムシークエンシングデータなどと比較すると少ない。そのため、研究チームは「two-step imputation法」によって外部の参照ゲノム配列データを利用し、集団中に比較的高頻度に存在する遺伝子多型情報をゲノム領域全体にわたって再構築した。外部の参照データを利用しなかった場合、ゲノム領域全体の情報を得ることは難しいものの、一部の集団中にごく低頻度にしか存在しない遺伝子多型の情報を取得できることが分かったという。
研究成果は5月16日、ネイチャー・マイクロバイオロジー(Nature Microbiology)誌にオンライン掲載された。研究成果は、法医学分野での活用や、個別化医療への応用が期待できるとしている。
(笹田)
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