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再エネ依存が原因? スペイン大停電で何が起きていたのか
Fermin Rodriguez/NurPhoto via AP
What Spain's blackout says about the grid

再エネ依存が原因? スペイン大停電で何が起きていたのか

4月28日にスペイン全域で起こった大規模停電の原因の一つとして、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電が影響している可能性がある。当日、いったい何が起こったのか。現時点で分かっていることを説明しよう。 by Casey Crownhart2025.05.12

この記事の3つのポイント
  1. スペインで大規模な停電が発生し数千万人に影響が及んだ
  2. 送電網の周波数逸脱や再生可能エネルギー大量導入との関連が指摘されている
  3. 送電網の安定化には慣性の確保や大量の蓄電池設置などの対策が必要とされる
summarized by Claude 3

4月28日月曜日の正午ごろ、スペインで停電が発生した。ポルトガルとフランスの一部にも及んだ送電網全体のブラックアウトは、数千万人に影響を及ぼし、フライトは欠航携帯電話ネットワークはダウン企業は終日休業を余儀なくされた。

1週間以上経過しても、当局は依然として何が起こったのかを完全には把握できていない。だが、クリス・ライト米国エネルギー長官をはじめとする一部の人々は、停電の直前に風力と太陽光が発電の約70%を占めていたことから、再生可能エネルギーが原因の一端である可能性を指摘している。一方で、スペイン政府関係者を含む他の専門家は、責任を問うのは時期尚早だと述べている

完全な報告書が出るまでには数週間かかる見込みだが、現時点で判明していることもある。そして、全体像を待つ間にも、今後の送電網に役立つ可能性のある教訓はいくつか存在している。

まず、現時点で判明していることを見てみよう。スペインの送電網運用事業者であるレッド・エレクトリカ(Red Eléctrica)によれば、以下の点が確認されている。

  • 午後12時30分過ぎ、発電に障害が発生した。これは発電所が停止したか、送電設備が故障した可能性がある。
  • その約1秒後、送電網はさらに発電を失った。
  • さらにその数秒後、送電網の不安定性の結果として、スペインと南西フランス間の主要な連系線(ある電力系統と別の電力系統を結ぶ送電線)が切断された。
  • その直後に、スペイン全土の発電が事実上停止した。

浮上している仮説の1つは、送電網の周波数が通常から逸脱したことで問題が生じたというものである。すべての送電網には定められた周波数がある。欧州の標準は50ヘルツであり、これは電流が1秒間に50回方向を切り替えることを意味する。スムーズな運用のためには、送電網全体で周波数を一定に保つ必要がある。

停電が周波数に関連している可能性を示す兆候もある。ある専門家は、停電の直前に送電網の周波数に奇妙な振動が発生していたことを指摘している。

送電網は通常、周波数の変動や発電所の停止による電力の一時的な低下といった小さな問題には対処できる。しかし、その安定性の一部は、旧来の発電方式に依存している。

石炭や天然ガスを使用する発電所には巨大な回転式発電機があり、これらは一時的な不均衡が起きても慣性により数秒間は動き続け、その間に他の電源が不足分を補う猶予を与える(これはごく簡略化した説明であり、詳細は米国立再生可能エネルギー研究所のレポートの参照をおすすめする)。

太陽光パネルには慣性がない。太陽光パネルはインバーターを通じて、送電網に適合した周波数に電力を変換する。一般的に、これらのインバーターは「グリッド追従型」であり、周波数が低下するとそれに追従してしまう。

今回のスペインでの大規模停電では、慣性のない電源が大量に接続されていたことで、小さな問題が重大な障害へと発展しやすくなった可能性がある。

ここで、依然として解明されていない重要な疑問も残されている。たとえば、発電の低下が起きた際に、風力や太陽光の発電所が最初に停止したのか、それともすべてが同時に停止したのかという点である。

風力や太陽光が停電の根本原因だったかどうかに関係なく、これらの電源は他の発電方式のように送電網の安定性に貢献しないことは明らかであると、環境研究機関であるブレークスルー研究所(Breakthrough Institute)の気候部門責任者シーバー・ワン博士は指摘する。そして、再生可能エネルギーが原因かどうかにかかわらず、送電網の安定化能力を強化することが大規模停電の回避に役立つと付け加える。

再生可能エネルギーに大きく依存する送電網が失敗する運命にあるわけではない。ワン博士が5月3日の分析で述べているように、「今回の大規模停電は、風力および太陽光発電を大量に導入した電力システムを運用した結果として不可避なものではない」。

解決策の1つは、原子力発電や水力発電など、慣性を提供できる設備を送電網に十分に組み込むことである。ワン博士は、2027年から開始されるスペインの原子炉閉鎖計画を撤回することが有益だと述べている。他の選択肢としては、物理的な慣性を与える大規模な機械を建設することや、周波数を能動的に制御し、一種の合成的な慣性を提供できる「グリッド形成型」インバーターを使用することがある。

とはいえ、慣性がすべてではない。送電網運用業者は、問題が発生した際にすばやく対応できる大量の蓄電池を設置することでも問題に対処できる。スペインは、米国のテキサス州やカリフォルニア州など再生可能エネルギーの普及率が高い他地域に比べ、送電網用の蓄電容量が非常に少ない。

結論として、ここでの教訓が1つあるとすれば、それは、送電網が進化するにつれて、それを信頼でき、安定したものに保つための手法も進化させる必要があるということだ。

さらに詳しく知りたい方には、今回の大規模停電とその余波についてのカーボン・ブリーフ(Carbon Brief)のQ&Aと、慣性、再生可能エネルギー、ブラックアウトについてのヒートマップ(Heatmap)の記事をお勧めする。

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ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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