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クアンティナム、バリウム採用の量子コン——イオン型の優位性示す
Quantinuum
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A new ion-based quantum computer makes error correction simpler

クアンティナム、バリウム採用の量子コン——イオン型の優位性示す

クオンティニュアム(Quantinuum)が、バリウムイオンを量子ビットに使う新型の量子コンピューターを発表した。1つの論理量子ビットを作成するのに必要な物理量子ビットの数が超伝導回路を使うよりも少なくて済み、規模拡大が容易になる可能性がある。 by Sophia Chen2025.11.11

この記事の3つのポイント
  1. クアンティナムが98個のバリウムイオンを量子ビットとする第3世代量子コンピューター「Helios」を発表した
  2. イオン型量子ビットは超伝導回路型より全対全接続性により少ない物理量子ビットでエラー訂正が可能である
  3. 商業的に有用なアプリケーション実現時期は不明だが2029年に数千量子ビット搭載機の提供を計画している
summarized by Claude 3

米国と英国を拠点とするクオンティニュアム(Quantinuum)が、計算能力とエラー訂正機能を拡張した第3世代の量子コンピューター「Helios(ヘリオス)」を発表した。

既存の他の量子コンピューターと同様に、Heliosは材料発見や金融モデリングに有用なアルゴリズムなど、業界が夢見る収益性の高いアルゴリズムを実行するほどの性能はない。しかし、個々のイオンを量子ビットとして使用するクオンティニュアムのマシンは、グーグルやIBMのような超伝導回路を量子ビットとして使用する量子コンピューターよりもスケールアップが容易である可能性がある。

「Heliosは、より大規模な物理システムへの拡張性を示すロードマップにおける、重要な実証点です」。2021年にハネウェル・クアンタム・ソリューションズ(Honeywell Quantum Solutions)とケンブリッジ・クアンタム(Cambridge Quantum)の合併で設立されたクオンティニュアムのジェニファー・ストラブリー副社長は述べている。ハネウェルはクオンティニュアムの筆頭株主である。

コロラド州にあるクオンティニュアムの施設に設置されたHeliosは、ミラー、レーザー、光ファイバーなど無数の部品で構成されている。その中核は、実際の計算を実行する量子ビットとして機能するバリウムイオンを含む親指の爪サイズのチップである。Heliosは一度に98個のバリウムイオンで計算を実行する。Heliosの前身である「H2」は56個のイッテルビウム量子ビットを使用していた。バリウムイオンはイッテルビウムよりも制御が容易であることが証明されているため、アップグレードとなる。これらの部品はすべて、光学テーブルの上で絶対温度約15K(摂氏-258℃)に冷却されたチャンバー内に設置されている。ユーザーはクラウド経由でリモートログインして、このコンピューターにアクセスできる。

Heliosは情報を、イオンの量子状態として符号化する。この状態は古典的コンピューティングのビットのように0と1を表すだけでなく、重ね合わせと呼ばれる両方の確率的組み合わせも表現できる。量子コンピューティングの特徴であるこれらの重ね合わせ状態は、空中で回転しているコインの状態に似ている。表でも裏でもなく、両方のある確率である。

量子コンピューティングは、イオンのような量子力学的オブジェクトの独特な数学を利用して計算を実行する。この技術の支持者は、これによって電池開発のための高精度化学シミュレーションや、物流・金融のためのより良い最適化アルゴリズムなど、商業的に有用なアプリケーションが可能になると考えている。

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