AI家電、人型ロボ——CES 2026で中国企業が圧倒的存在感
米ラスベガスで開催されたCES 2026。中国企業が全出展者の約4分の1を占めた会場では、ヒューマノイドロボットがバク転やピアノ演奏を披露し、 「我々は欧米より速く反復できる」という自信が会場に満ちていた。パンデミック後、初めて中国の存在を無視できない年となった。 by Caiwei Chen2026.01.13
- この記事の3つのポイント
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- CES2026で中国系出展者が全体の約4分の1を占め、AIハードウェアやロボット工学分野で圧倒的存在感を示した
- 中国企業は製造業の強みを活かしAI家電やヒューマノイドロボット分野で欧米を上回る洗練された製品を開発している
- 中国企業は反復開発力で物理世界のAI訓練データ不足を解消、ヒューマノイドの実用化を目指す
「CESに行く」と決めたのは、かなり直前のことだった。年末年始の休暇中、中国のテック関係者たちから「ラスベガスで会いませんか」という連絡が何度も届いたのだ。彼らの出展や訪問の話を聞くうちに、ついに心が動いた。米国に拠点を置き、中国のテック業界を取材する記者として、年に一度、自分の取材対象が一斉にこちらへ集まってきてくれる機会だ。わざわざ20時間もかけて飛ぶ必要はないのだ。
CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)は、企業が新しいガジェットを発表し、最新技術や今後のビジョンを紹介する、世界最大のテクノロジー見本市である。毎年1月にラスベガスで開催される。今年は14万8000人以上の来場者と4100社以上の出展者を集めた。会場はラスベガス・コンベンションセンター(同市最大の展示スペース)全体に広がり、隣接するホテルにも溢れていた。
中国企業は長年、CESで存在感を示してきたが、今年はとりわけ大規模に出展していた。中国系の出展者は全体の約4分の1を占め、AIハードウェアやロボット工学といった分野では特に圧倒的な存在感を見せていた。会場では、大勢の中国人業界関係者が歩き回り、中国系ベンチャーキャピタルも目立って多かった。CESの常連参加者たちは、今年がパンデミック後で初めて中国の存在を無視できない年だと語っていた。昨年もその傾向は見られたが、多くの中国人参加者がビザを拒否されたという。今年はAIブームのおかげで、「出張の名目」が立てやすくなり、渡航の正当性を示す口実にもなっている。
予想通り、AIは今年最大のテーマであり、すべてのブースの壁にその文字が見られた。AIは皆が話題にする最重要テーマであると同時に、極めて混乱を招くマーケティングの仕掛けでもある。「AIを搭載しました」という言葉は、PC、スマートフォン、テレビ、防犯システムといった妥当な製品から、スリッパ、ヘアドライヤー、ベッドフレームといった突飛なものにまで貼り付けられていた。
消費者向けAIガジェットは、依然として初期段階にあり、その品質は非常にばらつきがある。最も一般的なカテゴリは教育用デバイスと感情的なつながりを意識したおもちゃで、これらは少し前に私が記事にしたように、中国で大流行しているものだ。中には印象に残る製品もある。ルカAI(Luka AI)は、部屋中を動き回って赤ちゃんを見守るロボット・パンダを開発している。Fuzozo(フゾゾ)は、ふわふわしたキーホルダー大のAIロボットで、物理的な形を持つデジタル・ペットだ。あらかじめ設定された個性を持ち、接し方によって反応が変わる。こうした製品を販売する企業は、消費者がプライバシーへの影響を深く考えないことを願っているに違いない。
01.VCの投資家であるイアン・ゴーは、中国の製造業の強みがAI消費者向け電子機器において独自の優位性をもたらしていると語った。多くの西側企業は、ハードウェア分野で戦って勝つことは到底できないと感じているからだ。
中国企業が先頭に立っているように見えるもう一つの分野は、家電製品だ。彼らが開発する製品は、驚くほど洗練されてきている。家庭用ロボット、360度カメラ、防犯システム、ドローン、芝刈り機、プール用ヒートポンプ——。米国の家庭用清掃ロボット市場を実質的に支配し、ダイソンやシャークを打ち負かしている2つの中国ブランドがあることをご存じだろうか? 欧米で販売されているガーデニング用スマート家電のほとんどが深圳から来ていることをご存じだろうか? 中国国内には庭造りに夢中になるライフスタイルはほとんど存在しないにもかかわらず、である。これらの製品は非常に洗練されており、意識して探さない限り中国製とは気づかないだろう。かつての「安価で画一的」という固定観念では、私が見たものは到底説明できない。CESを後にして、私は「家電を全部買い換えないとな」と感じた。
もちろん、家電は安全で成熟した市場である。一方、より体験的な領域では、人型ロボット(ヒューマノイド)が群衆を引きつける巨大な磁石となって、中国企業は見事なショーを披露していたた。あらゆるロボットが、マイケル・ジャクソンからK-POP、さらには獅子舞まで、さまざまなスタイルでダンスをしており、バク転するものまでいた。杭州を拠点とするユニツリー(Unitree)は、人々が自社のロボットに「挑戦」できるボクシング・リングまで設置していた。ロボットファイターは成人の半分ほどの大きさで、試合はしばしばロボットのノックアウトで終わったが、それが主目的ではない。ユニツリーが実際にアピールしていたのは、ロボットの安定性とバランスだった。押されても、リング上でつまずいても直立を保ち、動作中に体勢を立て直していた。こうした動的な動きの誇示だけでなく、器用さを印象づける実演もあった。ロボットが紙の風車を折ったり、洗濯をしたり、ピアノを弾いたり、ラテアートを作ったりする場面が見られた。

とはいえ、どんなに優れて見えるロボットでも、そのほとんどが「一発芸専用」にすぎなかった。ショーフロアでの特定のタスクに最適化されている。私は、衣服をひっくり返したあとでTシャツを畳ませようとしたが、ロボットはすぐに混乱してしまった。
AIをテキストの中だけでなく、実世界へと広げる手段として、ヒューマノイドロボットは「次のフロンティア」として期待されている。大規模言語モデル(LLM)が成熟する中で、視覚と言語を統合するモデルは次の論理的ステップのように思える。しかし、そこで大きな問題に突き当たる。AIを訓練するための物理世界のデータは、テキストデータよりはるかに少ないのだ。ヒューマノイドロボットは、アプリケーションであると同時に、歩き回るデータ収集端末にもなる。中国は、サプライチェーンや製造力の深さ、そして電気自動車(EV)、バッテリー、モーター、センサーといった隣接産業からの波及効果により、この分野で独自の立ち位置を築いており、レスト・オブ・ワールド(Rest of World)の最近の報道によれば、すでにヒューマノイドの訓練産業を発展させつつあるという。
多くの中国企業は、「大規模に製造できれば、イノベーションも実現できる」と信じており、実際その考えは間違っていない。中国の新興ヒューマノイドロボット産業やその先の分野における自信の多くは、単一の画期的な技術革新というよりも、「我々は欧米よりも速く反復できる」という姿勢に基づいている。
中国企業はガジェットを販売するだけでなく、テクノロジースタックのあらゆる層で活動している。最終製品だけでなく、フレームワーク、ツール群、IoTの実装、空間データといった分野にも取り組んでいる。オープンソース文化も深く根付いているように感じられた。杭州のエンジニアたちは、同市の新たな「小さなシリコンバレー」で、AIハッカソンが毎週開催されていると語ってくれた。
実際、CES 2026における目玉のイノベーションはデバイスではなくクラウドにあった。プラットフォーム、エコシステム、エンタープライズ向けの導入事例、そして「ハイブリッドAI」(クラウド+デバイス上)アプリケーションである。今年最も話題となったメインステージ・イベントを開催したのはレノボで、もちろんPCも展示されていたが、中心となる話題は、同社のクロスデバイスAIエージェント・システム「Qira(キラ)」と、AIクラウド・プロバイダー向けに提案されたエヌビディア(Nvidia)とのパートナーシップだった。エヌビディアのCEOであるジェンスン・フアンは、新しいデータセンター・プラットフォーム「Vera Rubin(ヴェラ・ルービン)」を発表し、AIの学習と実行にかかるコストを劇的に引き下げると主張した。AMDのリサ・スーCEOは、巨大なAIワークロードの処理を目的とした別のデータセンター・システム「Helios(ヘリオス)」を紹介した。これらのソリューションは、データセンターにおけるAIコンピューティング需要の急増に対応し、クラウドサービスをより安価かつ強力にするための本格的な競争が始まっていることを示している。
中国に関連する参加者たちと話す中で私が感じた全体的な雰囲気は、慎重ながらも前向きな楽観主義だった。あるクローズドなパーティでは、中国のVCや起業家たちが、ベイエリアから移住してきた人々と自然に交流していた。誰もが何かを構築している。もはや中国の消費者から利益を得るだけで満足している人はほとんどいない。今や新たな常識は、「中国で構築し、世界に販売し、米国市場を試金石として扱う」ことである。
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- ツァイウェイ・チェン [Caiwei Chen]米国版 中国担当記者
- MITテクノロジーレビューの中国担当記者として、グローバルなテクノロジー業界における中国に関するあらゆるトピックを取材。これまで、ワイアード(Wired)、プロトコル(Protocol)、サウスチャイナ・モーニング・ポスト (South China Morning Post)、レスト・オブ・ワールド(Rest of World )などのメディアで、テクノロジー、インターネット、文化に関する記事を執筆してきた。ニューヨークのブルックリンを拠点に活動している。