「クルマの街」ロサンゼルスに新地下鉄がやってきた
ロサンゼルスが鉄道網の再建に取り組んで30年。5月、ウィルシャー・ブールバードに沿った新たな4マイル区間がついに開業する。タールとメタンガスに満ちた地盤、約40億ドルの費用、幾度もの遅延——。それでも新しい駅は、この街に何かが変わり始めた予感を漂わせている。 by Adam Rogers2026.04.24
- この記事の3つのポイント
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- LAメトロが5月、ウィルシャー大通り沿いに新たな地下鉄区間を開業し、渋滞地帯を25分で結ぶ
- メタンガスが充満する地盤という地質的難題を、土圧バランス型シールドマシンの採用で克服した
- 工期遅延・約40億ドルの超過費用・沿線開発の遅れを抱えつつも、都市変革の契機として期待される
ロサンゼルスが「クルマの街」の代名詞として知られるのは、その評判に違わぬ理由がある。2200平方マイル(約5700平方キロメートル)に広がるこの都市の営みは、幅広い大通りとコンクリートのアーチを描く高速道路によって支配されている。かつては世界水準の鉄道交通網を誇っていたこの街は、この30年間、路面電車と地下鉄のネットワーク再建に取り組んできた。5月には、ダウンタウンLAと太平洋を結ぶ主要な東西幹線であるウィルシャー・ブールバードに沿って、3駅を擁する新たな4マイル(約6.4キロメートル)区間が開業する。美術館が立ち並ぶ賑やかなこのエリアを車で通り抜けると今は数時間かかることもあるが、順調にいけば、電車で25分の旅になる。
ミラクル・マイルとして知られるこの地区に地下鉄の駅が誕生したことは、地理的・地質的条件を克服した技術的勝利といえる。その地下は、まさに災害の予兆をはらんでいる。地盤はタール状でメタンガスに満ちているのだ。実際、1985年にはメタンガスの爆発が起き、近隣のデパートが倒壊した。これを受けて市は、新たな鉄道路線を市内の別の地域へと迂回させた。
しかし今日では、可燃性の物質を含む地盤はもはや問題ではない。「技術がようやく懸念に追いつきました」と語るのは、LAメトロ(LA Metro)でこの地下鉄区間の工事を長年にわたって管理してきたエンジニアリング担当マネージャー、ジェームズ・コーエンだ。鍵となったのは、土圧バランス型シールドマシンだ。これは爆発性ガスを含む地盤を掘り進むために設計された自動掘削機である。掘り出した土砂をコンベヤーベルトで地上に運び出しながら、プレキャストコンクリート製のライナーセグメントをトンネル内に組み込んでいく。各セグメントはガスケットで接合され、ガスと水を遮断する管状構造を形成する。こうした仕組みにより、この機械は1日あたり約50フィート(約15メートル)のペースで掘削を進めることが可能になった。



一方、駅舎の建設は地上から掘り下げる工法で進められた。作業は主に週末に実施され、空間を掘り出してはコンクリートで覆い、その下で工事を続けながら、地上ではロサンゼルスのドライバーたちが車で移動し続けた。
プロジェクトは予定通りに完了したのか。否である。予算内に収まったのか。これも否である。この区間だけで約40億ドルの費用を要した。では市は、この延伸を最大限活用するために住宅整備や歩行者中心の開発を急いでいるのか。そうとは言い難い。それでも新しい駅は最終的に変革的な存在として感じられる。まるでロサンゼルスの列車が、ついに到着したかのように。
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- adam.rogers [Adam Rogers]米国版
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