KADOKAWA Technology Review
×
夏割実施中!購読料20%オフ。
警察官がストーカー目的で悪用、米車両監視大手の規則強化は効くか
Stephen Zenner / SOPA Images/Sipa USA via AP Images
Flock is tightening its rules in response to a growing surveillance backlash

警察官がストーカー目的で悪用、米車両監視大手の規則強化は効くか

米国の警察向けテクノロジー大手フロックは、全米12万台のカメラで車両の位置情報を収集し、警察に検索させている。だが最近、警察官がこの技術を交際相手のストーキングに悪用した事例が46件確認された。同社は検索時に事件番号の入力を義務付けるなどの対策を発表したが、本当に悪用を防げるのか。 by James O'Donnell2026.08.14

この記事の3つのポイント
  1. 米フロックは警察官の権限乱用と広範な監視への反発を受け、ナンバープレート読み取りの利用規制を強化した
  2. 事件番号入力と自動監査の義務化を導入したが、事件番号の真正確認は行わず抜け穴が残る
  3. ACLUは独立した外部検証なしに実効性は不明と指摘し、監視規模そのものへの根本的対応を求めている
summarized by Claude 3

警察向けテクノロジー大手のフロック(Flock)は本日、全米規模のナンバープレート読み取り機ネットワークへの警察官のアクセス方法を変更すると発表した。大規模監視や警察による権限乱用への懸念から高まる反発を抑え、失った契約を取り戻すための取り組みとみられる。

今回の変更のいくつかは、最近メディアで大きく取り上げられた問題、すなわち警察官がフロックの技術を悪用して、現在または過去の交際相手をストーキングしたり嫌がらせをしたりする行為に直接対処するものだ。フロックの12万台のカメラは全米規模のネットワークを形成しており、警察署はこれを利用することで、警察官に膨大な量の検索可能な位置情報データへのアクセスを提供できる。ワシントン・ポスト紙の最近の調査では、警察官がストーキングなど権限のない目的でフロックのカメラを使用したとして告発された事例が46件確認された。

この問題に対処するため、同社は警察官が検索を実行する前に刑事事件番号の入力を義務付ける方針だ。このシステムは昨年、オプション機能として導入されたが、今後は必須となる。各検索に正当な目的があることを確認するための措置だ。

これは市民団体が求めてきた最低限の基準だが、警察官は同様の安全策を回避する方法を見つけてきた。米国自由人権協会(ACLU)が最近明らかにしたところによると、フロックが検索理由の入力を義務付けた際、一部の警察官は「捜査」といった曖昧な言葉を使ったり、入力を求めるプロンプトをあざけるような回答をしたりしていた。オレゴン州のある警察署では、警察官が「hehehe」と20回入力していた。フロックは事件番号を確認しないため、警察官は新たな安全策も同じように容易に回避できる可能性がある。

しかしフロックは、そうした試みを検知するための自動監査システムを拡充すると本日発表した。この機能は警察官の検索活動を分析し、不審な検索を実行した警察官を管理者に通知する。これも昨年オプションとして導入されたが、今後は必須となる。フロックは自動監査ツールの精度に関する詳細を公表しておらず、独立した評価機関による検証も認めていない。

警察官による権限乱用の防止に加え、フロックはネットワークが収集するデータの量や、誰がそのデータを検索できるのかをめぐる広範な反発にも対応するための変更を実施する。同社は現在、各機関にデータの保持期間を30日ではなく7日とするよう推奨している(ただし、各機関はこの推奨に従わないこともできる)。また、各警察署は、自署のカメラが収集したデータを他の警察署が検索する際、特定の申告理由に基づく検索だけを許可することもできる。例えば、「誘拐」に関連する捜査は許可しつつ、「移民法執行」を目的とする検索は許可しないといった設定が可能だ。これもまた、警察官が検索理由を正確に申告することを前提とした安全策である。

こうした変更は、フロックへの反発があらゆる方面から高まる中で行われた。タッカー・カールソンは同社の技術が「奴隷国家」の形成に加担していると発言している。こうした反発を受けて複数の都市がフロックとの契約を打ち切ったと報じられているが、その正確な数を把握するのは難しい。2月にNPR(米国の非営利のラジオ・ネットワーク)が報じたところでは、過去1年間で少なくとも30都市が契約を打ち切ったが、活動家グループのデフロック(DeFlock)はその数をさらに多く見積もっている。ナンバープレート読み取り機を全面的に禁止する法律を制定する州や自治体がある一方、使用を認めている自治体の中には、フロックから他の業界大手であるアクソン(Axon)やモトローラ(Motorola)に乗り換える動きも出ている。フロックは、こうした契約解除は同社と契約している5000機関のうちごく一部にすぎないと述べている。

ACLUの上級政策顧問で、フロックをはじめとする自動ナンバープレート読み取り機メーカーの一種の宿敵となっているチャド・マーロウは、反発の主な原因は個々の権限乱用(それも事態を悪化させてはいるが)よりも、フロックのカメラが可能にする監視の圧倒的な規模にあると指摘する。

「米国では、何か悪いことをしたと考える場合にのみ、その人物を捜査することが許されています」とマーロウ顧問は言う。ナンバープレート読み取り機の普及が進むにつれ、読み取り機が収集する膨大なデータの検索には令状が必要ないため、警察官は犯罪の疑いを事前に示すことなく人々を捜査できる余地をますます広げている。彼はこう付け加える。「一定数の犯罪者を逮捕し、一定数の盗難車を取り戻すために、米国市民のプライバシーを骨抜きにする価値があるのでしょうか?」

フロックのギャレット・ラングレーCEOは、反発の原因を別の問題に求めている。「顧客を失った主な理由を見ると、それは誤情報です」とラングレーCEOはMITテクノロジーレビューに語った。同氏によれば、フロックが顔認識をしているとか、収集したデータを商業目的の買い手に販売しているといった誤解が広まっているという(ただし、誤情報だという批判は双方に向けられている。ACLUや他の批判者たちは、同社が自社技術に何ができるのかについて、市議会などの意思決定者に繰り返し虚偽の説明をしてきたと報告している)。

同社は社会的懸念に応じた措置を講じてきたが、ラングレーCEOは「私たちの姿勢は変わりつつあります。オプション機能を作るという考え方から、テクノロジー企業として、選択肢を提供するのではなく安全策を義務付ける責任があるという確信を強める方向へ、です」と話す。

フロックの新たなルールは、ACLUが主張してきた内容と比べると、明らかに小幅で段階的なものだ。マーロウ顧問はこれらを概ね支持しつつも、権限乱用が実際に減少したかどうかを判断するには、同社が内部調査を引用するのではなく、初めて独立した研究者にシステムを開放する必要があると指摘する。

しかし、より大局的に見れば、この反発は同社を岐路に立たせていると彼は言う。

「フロックが話し合いの場に出てきたのは、自社に対するこの前例のない全米規模の反発に恐れをなしたからです」とマーロウ顧問は言う。「しかし同時に、こうした懸念に正当に応えるために本当に必要な変更をすることを、彼らはどうしても拒んでいます。つまり、これが同社が行なう意思のある最大限の対応なのです」。

人気の記事ランキング
  1. Trump’s AI protectionism has come for robotics 中国製ロボットを締め出す米国、その研究は中国製で回っている
ジェームス・オドネル [James O'Donnell]米国版 AI/ハードウェア担当記者
自律自動車や外科用ロボット、チャットボットなどのテクノロジーがもたらす可能性とリスクについて主に取材。MITテクノロジーレビュー入社以前は、PBSの報道番組『フロントライン(FRONTLINE)』の調査報道担当記者。ワシントンポスト、プロパブリカ(ProPublica)、WNYCなどのメディアにも寄稿・出演している。
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る