フラッシュ2023年9月29日
- 知性を宿す機械
PFN、日英2言語対応の大規模言語モデル
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]Preferred Networks(プリファード・ネットワークス、PFN)は、日英2言語対応の事前学習済み大規模言語モデル「PLaMo-13B」を開発。オープンソース・ソフトウェアとしてApache License 2.0で公開した。パラメーター数は130億で、日英2言語を合わせた能力では世界トップ級の性能だという。
深層ニューラルネットワークの基本構造は、メタAI(Meta AI)が開発した「LLaMA(Large Language Model Meta AI)」を踏襲し、今後の拡張に備えて手を加えたものを採用した。学習用データはオープン・データセットを基にPFNが独自に収集・加工した、1.4兆トークンの日英2言語のデータセットを使用。産業技術総合研究所の「AI橋渡しクラウド(ABCI)」を利用し、エヌビディアのGPU「A100」480基で1カ月弱の学習を実施したという。
ベンチマーク・テストでは、日本語能力では東京大学の松尾研究室が公開した「weblab-10B」を超え、英語能力ではMata AIの「LLaMA-2 7B」と同程度という結果が出た。この結果からPLaMo-13Bは、日本語を学習した大規模言語モデルの性能としてはトップ級で、他の日本語モデルに比べて優れた英語能力を持つとしている。
PFNは今後、PLaMo-13Bを基にした事前学習モデルや、指示学習させたモデルも公開する予定だ。
(笹田)
- 生命の再定義
キラーT細胞を活性化するRNAワクチンを創出=東北大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東北大学と理化学研究所の共同研究チームは、人工脂質を用いて作られた脂質ナノ粒子が、がん免疫や感染免疫を促進する性質を持つことを発見。この脂質ナノ粒子にメッセンジャーRNA(mRNA)を搭載したRNAワクチンは、がんや感染細胞を殺傷する「キラーT細胞」と呼ばれる免疫細胞を強く活性化することを明らかにした。
RNAワクチンは、病原体の目印となる「抗原」を遺伝子情報としてmRNAに組み込み、生体内でタンパク質がつくられるようにした製剤である。mRNAを生体内の細胞の中に届けるために脂質ナノ粒子(LNP:Lipid Nanoparticle)を使っており、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して迅速な応用が進んだ一方、その免疫誘導メカニズムには未解明な部分が多い。
研究チームは今回、マウスモデルを用いて、細胞性免疫の活性を基準にmRNA封入LNPの条件を検討し、脂質の組成、脂質と mRNA の配合比、調製条件に関して検討した。その結果、ビタミンEを構造内に含む人工脂質を用いてLNPを作製し、mRNAを組み込むと、キラーT細胞を強く活性化するRNAワクチンとして働くことを見い出した。
続いて、RNAワクチンのどのような性質が、自然免疫の活性化に関わるかマウスを用いて検討。LNPを構成する脂質の中でも、イオン化脂質と呼ばれる成分の脂溶性構造の違いが、免疫応答に寄与していることを見い出した。さらに、このLNPを生体内で取り込み、キラーT細胞にワクチン抗原を提示する免疫細胞を特定した。
今回の成果によるRNAワクチンのメカニズム解析は、より効率的なワクチンの開発や、目的のタンパク質を補充するmRNA医薬の創出につながることが期待される。研究論文は、ACSナノ(ACS Nano)電子版に2023年9月26日付けで掲載された。
(中條)
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