フラッシュ2022年3月3日
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骨形成から骨吸収への移行メカニズムを明らかに=阪大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]大阪大学の研究グループは、骨形成から骨吸収への移行メカニズムを解明した。破骨細胞が古く傷んだ骨を壊し(骨吸収)、その後骨芽細胞が骨を作る(骨形成)というサイクルを繰り返す骨の新陳代謝のうち、骨形成から骨吸収に移行する仕組みはよく分かっていなかった。
研究グループは、独自に開発した生体イメージング技術を使い、骨組織に存在する「細胞外小胞」いう小さな粒子を可視化することに成功。マウス生体内で、骨を作る骨芽細胞が細胞外小胞を分泌することを発見した。細胞外小胞を回収して培養骨芽細胞に投与すると、小胞を取り込んだ骨芽細胞は、骨を作るために必要な石灰化機能が低下し、骨芽細胞分化に必要なRUNX2(ランクス2)タンパク質の発現量が低下。同時に、骨吸収を担う破骨細胞の分化に必要なRANKL(ランクル)タンパク質を分泌し、破骨細胞分化を誘導した。つまり、細胞外小胞を取り込んだ骨芽細胞が、新たな骨形成を抑制しながら、骨吸収を担う破骨細胞の分化を促進することが分かった。
高齢者に多い骨粗しょう症のほか、骨折、骨腫瘍、骨軟化症などの骨疾患は、骨吸収と骨形成の骨代謝バランスが大きく関与している。骨吸収から骨形成だけでなく骨形成から骨吸収へ移行を促す因子が明らかになったことで、骨疾患の新たな治療法の開発が期待できるという。研究成果は2月24日、英「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」誌に掲載された。
(笹田)
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