フラッシュ2022年7月20日
量子計算機でCO2の振動エネルギー準位を正確に計算=東大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学とDICの共同研究チームは、量子コンピューターと従来型コンピューターの両方を使用し、振動エネルギー準位を計算するためのハイブリッド手法を新たに開発。二酸化炭素分子の振動準位のエネルギーを量子コンピューターで正確に計算できることを実証した。
研究チームは、量子コンピューターで得られたエネルギーを従来型コンピューターで得られた参照結果と比較することによって、ノイズによる系統的誤差を推定する単純なエラー抑制法を導入。二酸化炭素のフェルミ共鳴準位の準位エネルギーを、0.1 cm-1(0.001キロジュール/モル)未満の小さな誤差で計算できることを示した。量子コンピューターは、古典コンピューターでは計算することが難しいいくつかの重要な行列要素の計算にのみ使うことで、ノイズの影響を軽減すると同時に、従来型コンピューターだけを使う場合よりも正確な振動エネルギー準位の計算が可能となったという。
量子コンピューター上の計算は、新川崎に2021年に設置されたIBM製の27キュービット超伝導型量子コンピューター「IBM Quantum System One」(通称「ibm_kawasaki」)を用いた。今回の成果により、量子コンピューターが振動分光学で必要となる多原子分子の正確な振動エネルギー準位を計算するための有望なツールであることが示された。
研究論文は、AVS量子サイエンス(AVS Quantum Science)誌のオンライン版に7月13日付けで掲載された。
(中條)
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