フラッシュ2022年8月31日
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実験ノートをAIで自動解析、材料研究をデジタル化=早大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]早稲田大学と物質・材料研究機構の研究グループは、化学・材料実験の様子を電子ノートに記録し、実験操作と結果の関連を人工知能(AI)で自動的に解析するシステムを開発した。AIシステムでの解析を通して、室温で液体に近い伝導度を示す高分子固体電解質の最適な製法や、高性能の鍵となるメカニズムを解明したという。
従来の研究手法では、研究者が実験結果を紙に記録し、解析用のデータベースを構築するなどの手間がかかっていた。今回、研究グループは化学・材料実験の様子をグラフ構造を用いて電子ノートに記録。グラフ構造は情報間の関係を点と線で表現するデータ形式で、文章や画像に比べてAIが理解しやすい。研究者になじみ深いフローチャートにも似ており、実験操作や結果だけでなく日付や気温、装置や試料の状態など、材料特定に影響するさまざまな情報を記録できるため、AIにも研究者にも適している。
グラフ構造の解析には、分子構造と物性の相関解析などに使われているフィンガープリント・アルゴリズムを用いた。完成したシステムを電池の高分子固体電解質の実験研究に利用し、500回以上の実験データ記録を解析したところ、新材料の性能把握につながる重要な構造や実験因子の抽出に成功したという。
研究成果は8月17日、「npjコミュニケーションズ・マテリアルズ(npj Computational Materials)」誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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