フラッシュ2023年1月18日
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細胞老化を促進し寿命を制限するメカニズムを解明=東大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学定量生命科学研究所の研究チームは、個体が老化する原因の1つである細胞老化を促進させる老化因子として機能している遺伝子を特定。同遺伝子の発現量が加齢と共に増加することで、細胞老化を加速し寿命を制限させることを発見した。
細胞老化研究のモデル生物として広く利用されている出芽酵母の寿命に影響を及ぼす原因の1つとして、ゲノム中で最大の脆弱部位であるリボソームRNA遺伝子(rDNA)の不安定化が知られている。だが、その詳細なメカニズムはまだ解明されていない。
研究チームは今回、出芽酵母の長寿欠損株のrDNAの安定性を網羅的に解析。その結果、転写伸長因子Spt4の遺伝子(SPT4)を欠損した株では、rDNAの安定性が大幅に増加し、寿命が延長していること、および、その表現型を示す原因として、rDNA上の非コードプロモーター(E-pro)の転写活性が低下していることを発見した。
さらに、加齢と共にSpt4の発現量が増加することで、E-proの転写活性がより増強され、細胞老化を加速し、寿命を制限させることを観察。これらのことから、転写伸長因子Spt4は、加齢に伴いリボソーム遺伝子上の非コードRNAの転写を促進し、rDNAの不安定化および細胞老化を促進すると結論付けた。
今回の成果は、ヒト細胞の老化のメカニズム解明や、老化に関連した疾患の原因解明および治療への足掛かりになることが期待される。研究論文は、米国の学術誌、セル・レポーツ(Cell Reports)に2023年1月10日付けで掲載された。
(中條)
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