フラッシュ2023年5月15日
アセトアミノフェン肝障害の新たな治療法=北大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]北海道大学と熊本大学の研究グループは、アセトアミノフェン(APAP)の過剰摂取で発生する重篤な肝障害を治療する新たな手法を発見した。APAPは肝臓で毒性代謝物質に変換されるが、グルタチオン(GSH)によって解毒される。しかし、APAPを過剰に摂取するとGSHが枯渇し、解毒できなかった毒性代謝物質がミトコンドリアなどの細胞小器官と結合して酸化ストレス増大による細胞死を引き起こす。
研究グループは、APAP肝障害によって酸化ストレス状態にあるミトコンドリアを正常化する抗酸化療法の効果を検証した。酸化ストレスを緩和する薬にはコエンザイムQ10を選択。コエンザイムQ10は強力な抗酸化作用を発揮して活性酸素を除去する上、ミトコンドリアでのエネルギー産生に欠かせない物質だが、極めて水に溶けにくい性質があるため、生体に吸収させるための工夫が必要となる。そこで、脂質ナノ粒子であるミトコンドリア標的型ナノカプセルを開発し、コエンザイムQ10を入れた。この処置には、新型コロナウイルスワクチン製造の基盤技術であるマイクロ流体デバイスを使用した。
研究グループはAPAP肝障害モデルマウスに、コエンザイムQ10を入れた脂質ナノ粒子を投与し、治療効果を検証した。その結果、肝機能の指標となるALTの値が有意に低下し、肝機能が改善した。
研究成果は5月10日、サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)誌にオンライン掲載された。
(笹田)
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