フラッシュ2023年7月7日
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マラリア原虫とヒトの概日リズムの同調機構を発見=東工大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京工業大学などの国際共同研究チームは、ヒト体内で概日リズム(多くの生物に内在する日周変動サイクル)制御に関わるホルモンである「メラトニン」が、熱帯熱マラリア原虫の増殖に必須であり、同原虫固有のゲノムを持つ細胞内小器官における遺伝子発現を活性化することを発見した。
マラリアに感染すると、患者は周期的な悪寒や発熱、頭痛や疲労感に苦しむことが知られている。ヒトは24時間周期で振動する概日リズムを持ち、マラリア原虫も独自の概日リズムを持っている。しかし、感染前には別々に振動していた各々のリズムが、感染後に同調して周期的なマラリアの症状を引き起こす仕組みはこれまで理解されていなかった。
マラリア原虫の細胞内にある細胞内小器官「アピコプラスト」は、同原虫の増殖に必須な機能を有しており、アピコプラストのゲノムにコードされた遺伝子の転写にはバクテリア型のRNAポリメラーゼ(RNAを合成する酵素)が関わっている。研究チームは今回、このRNAポリメラーゼの転写開始に必須なタンパク質である「シグマ因子(DNA上で転写を開始する場所を決定するタンパク質)」が、熱帯熱マラリア原虫の核ゲノムにコードされていることを発見した。
研究チームはさらに、メラトニンの存在がこの遺伝子の発現を活性化し、それに伴いアピコブラストゲノムにコードされる遺伝子の発現が活性化されることを明らかにした。同チームによると、周期的に体内で生じるメラトニン分泌がスイッチとなり、そのタイミングでマラリア原虫が活性化するため、ヒトの概日リズムとマラリア原虫の活性周期が同調すると考えられるという。
今回、ヒトとマラリア原虫のリズム同調に関わるメカニズムの一つが明らかになったことで、この情報伝達のかく乱もしくは阻害する、マラリア発症の分子機構を標的とした抗マラリア薬開発の可能性が示された。研究論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS:Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America)」に2023年7月3日付けでWeb掲載された。
(中條)
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