フラッシュ2023年9月7日
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生物工学/医療
深層学習を用いた対話型の電顕画像解析ソフト=東大など公開
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学と沖縄科学技術大学院大学の共同研究チームは、深層学習と人間による対話型の画像解析プラットフォーム「PHILOW(Python-based human-in-the-loop workflow)」を開発。同プラットフォームを用いて、ミトコンドリア内部立体構造の詳細な可視化に成功した。
ミトコンドリアなどのオルガネラ(細胞内小器官)構造を解析するには、細胞内に複雑に混在するさまざまな構造が映り込んだモノクロの電子顕微鏡(電顕)画像中から、目的のオルガネラだけを塗り絵のように手作業でトレースする必要がある。そのため、これまでその解析には膨大な時間を要した。
そこで研究チームは今回、、これらの作業を実行するために必要な全ての機能を搭載した、深層学習と人間による対話型画像解析プラットフォームPHILOWを開発。電顕画像から目的構造を抽出するのを正確かつ高速化し、ミトコンドリア全体のクリステ(内膜のうち層状あるいはチューブ状の折り畳まれた構造)の立体構造を、これまでにない精度で可視化し、定量的に解析することを可能にした。
さらに、実際に同プラットフォームを用いて、優性遺伝性視神経萎縮症の発症と非常に高い関連が知られる「OPA1」タンパク質のクリステ形成制御における新たな役割を解明した。同チームによると、今後、同プラットフォームを用いることで、クリステ構造が異常になることが知られているパーキンソン病などの神経変性疾患やミトコンドリア病などの疾患について、原因究明の加速が期待されるとしている。
同チームは、PHILOWをGitHubで無料公開し、インストール方法から使用方法まで詳細に説明している。研究論文は、プロスバイオロジー(PLOS Biology)に2023年8月31日付けで掲載された。
(中條)
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