フラッシュ2023年10月28日
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生物工学/医療
放射性抗体を利用した膵臓がんの診断・治療一体技術=阪大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]大阪大学、岩手医科大学、理化学研究所の研究グループは、放射性抗体を利用して膵臓がんの画像診断と治療を一貫して実行する技術を開発した。膵臓がんは画像診断では発見が難しく治療が効きにくい上に、進行しやすいため、画像診断による早期発見を可能にする技術と有効な治療法が求められている。
狙った標的に結合する化合物に対して、標識する核種を変えることでがんの診断から治療まで一貫して実行する手法は「セラノスティクス(Theranostics)」と呼ばれる。研究グループは、膵臓がんに発現するタンパク質であるグリピカン-1(glypican-1)を標的とした新たなPET画像診断プローブ「Zr-89標識抗glypican-1抗体」と、α線治療薬At-211標識抗glypican-1抗体を開発した。
Zr-89標識抗glypican-1抗体を膵臓がんのモデルマウスに静脈注射し、腫瘍に集積することを画像で確認。標識する核種をα線を放出するアスタチンに切り替えたAt-211標識抗glypican-1抗体を投与し、未標識抗体を投与した対照群と比較して、膵臓がんの増殖を抑える効果を確認した。PET画像診断プローブの標識にはジルコニウム(Zr-89)を使用した。従来のPET画像診断に使用するフッ素(F-18)の半減期は110分と短かったが、Zr-89の半減期は78.4時間と長く、比較的ゆっくりと分布する抗体に適している。
アスタチン(At-211)は、従来の放射線よりもエネルギーの高いα線を放出する核種。理化学研究所が重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」の加速器を利用してアスタチンの大量製造に向けた技術を開発しており、大阪大学に安定供給している。
研究成果は10月12日、ジャーナル・オブ・ニュークリア・メディシン(Journal of Nuclear Medicine)にオンライン掲載された。
(笹田)
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