フラッシュ2023年11月12日
- 宇宙
宇宙嵐を発達させるのは地球起源プラズマ、従来の学説を覆す発見
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]名古屋大学、宇宙航空研究開発機構、東京大学などの国際共同研究チームは、「宇宙嵐」を引き起こしているのは、従来考えられてきた太陽起源のプラズマよりも、地球起源のプラズマが主要因であることを発見した。宇宙嵐は、太陽面の爆発で放出されたプラズマの塊が地球近傍を通過する際に起こるとされる変動現象である。宇宙嵐のときには地球周辺の宇宙環境が大きく変化し、人工衛星に障害が生じたり、地上で強い電流が流れたりして送電網に影響が及ぶことがある。
研究チームは今回、国際協力によって、日本の探査衛星「あらせ」、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)の合計4基の科学衛星のデータを解析。地球近傍の宇宙空間(ジオスペース)で、太陽と地球起源のプラズマの組成を分離することに初めて成功し、宇宙嵐の発生時に、地球磁気圏のプラズマが太陽起源から地球起源へと変化することを発見した。
さらに、宇宙嵐の発達において、はじめは地球起源の水素イオンが支配的であり、その後、地球起源の酸素イオンが宇宙嵐の主要因となることも同定した。これは、従来考えられてきた太陽起源のイオンだけでなく、地球起源のイオンも、宇宙嵐の発達に大きく影響することを示しているという。
今回の研究成果は、宇宙嵐による宇宙環境の変化を理解したり、予測したりするには太陽からのプラズマだけではなく、地球からのプラズマの挙動を正確に理解する必要があることを示しており、これまでの宇宙嵐の理解に大きな変革を迫るものだという。研究論文は、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年10月30日付けで掲載された。
(中條)
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