フラッシュ2023年12月18日
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気候変動/エネルギー
次世代リチウムイオン電池正極材料の充放電効率低下原因を解明
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]物質・材料研究機構(NIMS)とソフトバンクが運営するNIMS-SoftBank先端技術開発センターの研究チームは、高エネルギー密度蓄電池用電極材料において、放電電圧が充電電圧に比べて著しく低くなる、電圧ヒステリシスの原因を解明した。
コバルト酸リチウム(LiCoO2)やルテニウム酸リチウム(Li2RuO3)など、従来の正極材料よりも多量のリチウムイオンを含有し、安定して脱離挿入できるリチウム過剰系電極材料は、次世代リチウムイオン電池のカソード材料として注目されている。だが、充放電時の電圧ヒステリシスが大きく、充放電時のエネルギー効率が低い点が課題となっている。
研究チームはルテニウム酸リチウムをモデル材料として採用し、その充電前後の結晶構造を精査した。その結果、放電後の結晶構造が充電前の構造に戻っていながら、電圧ヒステリシスが観測されることを発見した。従来、リチウム過剰系電極材料で電圧ヒステリシスが起こる理由としては、充放電で結晶構造が不可逆的に変化するためとされていたが、今回の観測結果は従来の見方を覆すものとなった。
充放電時の電極の構造変化を詳細に解析したところ、結晶構造が変化する「経路」が充電時と放電時で異なることが分かった。この結果から、リチウム過剰系電極材料で電圧ヒステリシスが起こる理由が、結晶構造の不可逆的な変化ではなく、結晶構造が変化する経路の違いに起因することが明らかになった。
研究成果は11月6日、エナジー・ストレージ・マテリアルズ(Energy Storage Materials)誌にオンライン掲載された。今後は、充放電時の電圧ヒステリシスだけでなく、電極材料の結晶構造の変化に着目することで、高容量と高い充放電エネルギー効率を両立するリチウム過剰系電極材料の開発が期待されるという。
(笹田)
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