フラッシュ2024年2月22日
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生物工学/医療
ケラチン球体ゲルで発毛・育毛効果、マウスで実証=筑波大など
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]筑波大学、MED R&D、マイキューテックの研究グループは、羊毛から取り出したケラチンを使用して、毛の成長を促進する新たな研究成果について発表した。研究グループは、このケラチンを非常に小さな球体に加工し、水に分散させることで「ケラチンマイクロ球体ゲル」を作り出した。そして、このゲルがマウスの毛の成長を促進することが確認された。
人間の皮膚は、細菌やウイルスなどの外部からの侵入者を防ぐ強固なバリアを有しているが、特定の物質を微細な粒子にすることで、このバリアを通過し毛根に到達できることが既存の研究で分かっている。研究チームはスプレーミスト法を用いてケラチンをマイクロ球体化し、これをゲル状にしてマウスの皮膚に塗布した。その結果、塗布から2日後に毛の成長が観察され、約2週間で毛が完全に生え揃うという効果が見られた。
この効果は、脱毛症治療薬として使われるミノキシジルの効果と同等である。しかし、ミノキシジルには特定の副作用が存在し、女性や子供への使用には制限がある。一方で、ケラチンは皮膚や毛髪の構成成分であり、副作用の心配がほとんどないため、より安全な選択肢となる可能性がある。
さらに、このゲルの効果を科学的に裏付けるために行われた遺伝子診断では、毛包の成長や細胞の分化に重要な役割を果たす複数の遺伝子が活性化されていることが確認された。これには、毛髪成長のサイクルや細胞の接着・分化に関与する遺伝子も含まれており、ケラチンマイクロ球体ゲルが毛の成長に直接影響を与えるメカニズムを示唆している。
発毛したマウスの背中の細胞を対象に、遺伝子診断を実施した結果、毛包の発達やケラチノサイトの分化に関与するNotch 1、メラノサイト幹細胞分化や毛包形態形成、毛周期過程、線維芽細胞増殖のポジティブ因子に関与するCtnnb1、毛髪成長サイクルやメラノサイト・ケラチノサイトの接着、分化に関与するCadherin、細胞周期や増殖、Notch 1およびAKT経路の制御に関与するK14など、発毛・育毛に関連する遺伝子の発現が対照実験に使用したマウスと比較して有意に促進していることが分かった。
研究成果は2月14日、ACSアプライド・バイオ・マテリアルズ(ACS Applied Bio Materials)誌にオンライン掲載された。副作用が少なく、効果的な発毛、育毛、養毛剤の開発が期待される。
(笹田)
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