フラッシュ2024年4月19日
-
ビジネス
磁性半金属の磁性をゲート電圧で変調することに成功=東大
by MITテクノロジーレビュー編集部 [MIT Technology Review Japan]東京大学の研究チームは、磁性半金属と呼ばれる特殊な強磁性体において、強磁性転移温度、磁気異方性、磁気輸送特性などの性質をゲート電圧で変調し、強磁性転移温度の大幅な上昇、磁気異方性の完全な切り替えなどの変化を観測することに成功した。
電気が流れる磁性体の研究は、スピントロニクスデバイスへの応用展開の可能性から注目されている。研究チームは今回、磁性半金属であることが最近明らかになったテルル化クロムという物質系に着目。ゲート電圧を細かく変化させることでテルル化クロム中に存在する伝導電子の数を精密に制御したところ、強磁性転移温度の大幅な上昇や、面直磁気異方性と面内磁気異方性の完全な切り替え、さらには異常ホール効果と呼ばれる磁気輸送現象の符号反転などの劇的な変化が観測された。
磁性のゲート電圧による変調は、これまで主に半導体に磁性イオンを添加して作られる希薄磁性半導体や鉄に代表される金属磁性体で実現されている。磁性半金属を用いた磁性体ゲートデバイスでは、磁性半金属は存在が希少ということもあり、そのような研究はほとんど実施されてこなかったという。
研究論文は、サイエンス・アドバンシス(Science Advances)のオンライン版に2024年4月12日付けで掲載された。
(中條)
-
- 人気の記事ランキング
-
- China wants to restore the sea with high-tech marine ranches 海に浮かぶ巨大施設、 中国が進める スマート海洋牧場の野望
- Promotion Innovators Under 35 Japan × CROSS U 無料イベント「U35イノベーターと考える研究者のキャリア戦略」のご案内
- Trajectory of U35 Innovators: Masaki Nakada 仲田真輝:人工生命起業家が「魚の養殖」にピボットした理由
- What’s next for AI in 2025 2025年のAIはこう動く 本誌が予測する5大トレンド
- Anthropic’s chief scientist on 5 ways agents will be even better in 2025 アンソロピック主任科学者が語る「AIエージェント」4つの進化