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揺らぐ死の定義、「死んだブタ」の脳の一部機能が回復 Scientists have restored circulation to severed pig brains in a step that blurs the definition of death

揺らぐ死の定義、「死んだブタ」の脳の一部機能が回復

生きている「瓶詰めの脳」。まるで出来の悪いSFで使い古されたイメージだが、イェール大学の科学者はこれを本当にやってみたという。

ネナド・セスタン教授率いる研究チームは、胴体から切り離したブタの頭部をニュー・ヘイヴンの食肉処理場から引き取り、死亡数時間後に循環機能の回復を試みた。研究成果は4月17日付けのネイチャー誌で発表された。

実験の結果、脳内の細胞の多くの活動を維持し、1日以上機能させ続けることに成功した。MITテクノロジーレビューは2018年4月にブタの脳を使ったこの実験を初めて報じている。

セスタン教授によると、脳細胞は生きていたものの、 ニューロンからの電気信号は検出されなかった。もし検出されていれば、胴体から切り離された状態で脳だけが意識を取り戻したことを示す結果となったかもしれない。

研究に参加した倫理学者は報道関係者向けの電話会見で、もし意識の回復を示す証拠が見つかっていれば、研究は中止しなければならないと話した。セスタン教授は、脳は「生きてはいない」と断言している。

研究チームが実験に使ったのは、独自に開発した「ブレインエックス(BrainEx)(BrainEx)」と呼ばれる装置だ。ブレインExは、ポンプ、フィルター、外科的連結などを使い、微小血管を含め、脳に酸素を供給する人工血液の循環機能を再生する。

今後大きな問題になりそうなのは、「死の定義」だ。心蔵が停止して数分が経つと、医師は死亡を宣告できる。ときには心臓や腎臓を移植するために速やかに摘出することもある。だが、死の定義はこのテクノロジーによって曖昧になるかもしれない。

ケース・ウェスタン大学の生命倫理学者であるスチュアート・ヤングナー教授とヒョン・インス教授は、「ブレインエックスと同様のテクノロジーが人間用に改良・開発されれば、 脳死判定を受けた患者は(中略)臓器提供よりもむしろ、脳蘇生の対象となる可能性があります」と述べている。

MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors] 2019.04.18, 11:10
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