KADOKAWA Technology Review
×
Spurned in India, Facebook Is Now Shopping Its Free Internet Program in the U.S.

Facebookのユーザー数を
アメリカで増やす方法

フェイスブックはインターネット接続のない地域への支援策だというが、ユーザー数を拡大したい巨大テック企業が、自社に不当に有利な方法を使おうとしている、ともいえる。 by Michael Reilly2016.10.10

フェイスブックは社会的使命感からアメリカの未解決の課題であるデジタル情報の格差縮小に貢献するのだろうか。あるいは金儲けをたくらむ冷酷な企業として、自社ブランドのインターネットをユーザーに押し付けたいのだろうか。

真実はどちらにも少しずつ当てはまる。ワシントンポスト紙によれば、フェイスブックはホワイトハウス高官を起用して米国で「フリー・ベーシックス」事業を立ち上げ、携帯電話事業者と提携してウィキペディアやフェイスブック等の対象Webサイトやアプリを無料で利用できるようにしようとしている。

フェイスブックの主張によれば、フリー・ベーシックスはすでに49カ国で展開されており、貧しい非都市部で暮らすユーザーがデータ通信料なしでオンライン・サービスを利用している。米国内で接続サービスを提供すれば、フェイスブックはユーザーに経済的な機会を提供できるという。

Facebook's Free Basics program did not go over well in India.
フェイスブックの「フリー・ベーシックス」事業はインドではうまくいかなかった。

しかし、「フリー・ベーシックス」が2月にインドで禁止されたのは、インドのインターネット規制当局により、ネットワーク中立の原則(通信事業者が伝送するデータの内容や送り主、送り先に関わらないこと)に反するとされたからだ。当局によれば、フリー・ベーシックスはコンテンツを階層化するシステムを構築し、フェイスブックのサービスを他社よりも優先させていた。

フェイスブックは米国で同様の事態が起きないよう、細心の注意を払っているが、別の問題が絡んで事態がややこしくなっている。携帯電話事業者のベライゾンやAT&T、T-モバイル、スプリントが、加入者のデータ使用量について特定のコンテンツを無料にしたり、ベライゾンとAT&Tはコンテンツ事業者側の負担でデータ通信量の上限に含めない「ゼロレーティング」について、米国連邦通信委員会(FCC)が調査を始めたのだ。

結局、フリー・ベーシックスの成功を最も資するのは、インドでの完敗以降フェイスブックが修正した事業内容だろう。現在、フェイスブックは、自社と少数の提携企業にのみデータ使用量の制限を撤廃するのではなく、フリー・ベーシックスへの参加を希望するサードパーティの開発者は皆歓迎の方針に切り替えたのだ。

利他主義というよりは実用主義的転換により、フェイスブックは少なくともインターネット接続拡大競争の勝者は複数でもよいと認めているようなのだ。

(関連記事:Washington Post, Ars Technica, “The Next President Will Inherit America’s Embarrassing Digital Divide,” “India’s Blow Against Facebook Sets Up a Grand Experiment in Net Neutrality,” “Facebook’s Controversial Free-App Plan Gets Competition”)

人気の記事ランキング
  1. ChatGPT is everywhere. Here’s where it came from 解説:空前のブーム「チャットGPT」はどこから生まれたのか?
  2. AI image generator Midjourney blocks porn by banning words about the human reproductive system ミッドジャーニーが生殖器官の入力を禁止、生成AIの悪用防ぐには
  3. How OpenAI is trying to make ChatGPT safer and less biased 「大ボラ吹き」のチャットGPTをどうしつける? オープンAIに聞いた
  4. 10 Breakthrough Technologies 2023 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2023年版
タグ
クレジット Photograph by Manjunath Kiran | Getty
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
10 Breakthrough Technologies 2023

MITテクノロジーレビューは毎年、その年を代表する10大テクノロジーを選んでいる。
これらのテクノロジーの中には、見覚えのあるものもあれば、意外なものもあるかもしれない。

私たちの生活に大きなインパクトを与える進歩とは何か? なぜそれが重要なのか? 説明しよう

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. ChatGPT is everywhere. Here’s where it came from 解説:空前のブーム「チャットGPT」はどこから生まれたのか?
  2. AI image generator Midjourney blocks porn by banning words about the human reproductive system ミッドジャーニーが生殖器官の入力を禁止、生成AIの悪用防ぐには
  3. How OpenAI is trying to make ChatGPT safer and less biased 「大ボラ吹き」のチャットGPTをどうしつける? オープンAIに聞いた
  4. 10 Breakthrough Technologies 2023 MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2023年版
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.10
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.10世界を変えるU35イノベーター2022年版

人工知能(AI)/ロボット工学、インターネット、通信、コンピューター/電子機器、輸送、持続可能性、生物工学など幅広いテクノロジー領域で活躍する2022年の日本を代表する若手イノベーター14人、米国・中国・欧州などで活躍するグローバルのイノベーター35人を一挙紹介する。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る