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Elon Musk’s House of Gigacards イーロン・マスク主演「ハウス・オブ・カード」シーズン2

テスラ、ソーラーシティ、スペースXの創業者は、テクノロジーへの深い洞察力により称賛を受けている。だがイーロン・マスクの最新の事業計画は無謀なのか? by Peter Burrows2016.10.12

イーロン・マスクCEOは自身の電気自動車会社を天才技術者ニコラ・テスラにあやかって「テスラ」と名付けた。だが化石燃料に取って代わるマスクCEOのビジョンの大胆さは、ニコラ・テスラにとって最大のライバルであったトーマス・エジソンを連想させる。白熱電球や家庭用電気メーター、さらに最初期のアルカリ蓄電池を発明した後、エジソンは個人資産の大半をそれら発明品の製造工場の建設に費やした。すべては自分の直流送電技術で世の中を電化する壮大な計画のためだ。マスクCEOが生まれる80年前に、エジソンは流行の最先端であった自動車をガソリンではなく電気で動かすためにアメリカの都市に充電ステーションのネットワークを構築するよう主張していたのだ。

マスクCEOのファンと投資家にとって、このような比較は必ずしも気分のよいものではないはずだ。”メンロパークの魔術師”と呼ばれたエジソンは、ほんの数年のうちに電気ビジネスからあっさりと締め出された。エジソンがアメリカの配電網の基礎となった交流送電技術を受け入れることを頑なに拒否し、次第に蓄音機や活動写真などの発明品の開発に重きを置くようになると、取締役会はエジソン・ゼネラル・ライティングをライバル会社と合併させて現在のゼネラル・エレクトリック社を誕生させた。46歳のエジソンに経営者としての役割は与えられなかった。「偉大な発明家は新しいものを取り入れることは得意だが、市場の変化についていくことは苦手な場合が多い」とラトガース大学エジソンアーカイブ「Thomas A. Edison Papers」のポール・イスラエル所長はいう。イスラエル所長は、エジソンは自身の電力計画から「注意をそらしすぎた」と言えるかもしれないと付け加えた。

テスラモーターズへの投資家の多くは、45歳のマスクCEOが、エジソン同様に迷走を始めたのではないかと疑っている。今年の夏、テスラはすでに何百万ドルという金を費やして世界一大きな建物となるバッテリー工場をネバダ州に建設し、同社初の大衆市場向け電気自動車、テスラ モデル3の生産に備えていた。そして7月にマスクCEOは太陽光パネル企業のソーラーシティを260万ドル相当の株式で支払って買収すると発表した。マスクCEOが「マスタープラン:パート2」と題した自身のブログ記事で記したように、この統合によって、スタイリッシュなルーフに埋め込まれた太陽光パネルで発電が行われ、それがテスラのバッテリーモジュールに蓄電され、もちろんその電力の一部が自動車を動かすのに使われる。だがこの合併会社は従来の自動車を販売するだけではない。新タイプの小型バスと18輪トレーラーを含む、自動運転モデルの発展的なポートフォリオを発表しようと計画しているのだ。またマスクCEOは乗車シェアサービスについても触れている。テスラの顧客が自身の自動運転車を不使用時に貸し出すサービスだ。

そしてマスクCEOは、これらすべてを商用宇宙ロケットメーカーであるスペースXを経営しながら実行しようとしている。マスクCEOはスペースXで生涯の夢である火星への人類入植を叶えようとしている。9月には一度に100人を火星まで運べるロケットを造る計画を明らかにした。料金は1人20万ドル程度だ。

「マスクCEOの大胆さは尊重すべきだが、必ずしもうまくいくとは限らない」と持続可能な電力インフラに投資するジェネレートキャピタル共同創業者でソーラー業界の元業界幹部であるジガール・シャーはいう。

テスラとソーラーシティの合意は書類上では非常に好ましくないように見えるため、投資家の多くは、ソーラーシティの救済に過ぎないのではないかと心配している。マスクCEOはソーラーシティの共同創業者であり会長を務め続けている。同じく共同創業者であるリンドン・ライブマスクCEOと最高技術責任者のピーター・ライブはマスクCEOの従兄弟だ。ソーラーシティは住宅およびビジネス向けの太陽光パネルのリース、設置、管理で市場を支配しているが、過去5年間で20億ドル以上の損失を計上している。ソーラーシティのビジネスモデルでは、複数年契約で顧客に無料でパネルを提供する事前コストをカバーするために膨大な資金を集める必要がある。創立以後、ソーラーシティは30億ドル以上を負債でまかなってきたが、それに対して収益は15億ドルに留まり、現在は金を貸してくれるよう人々を説得するのに苦労している。ソーラーシティは近年、6.5%という割のいい利率で”太陽光債”を売りに出した。顧客に投資を促すメールを送ったのだ。「誰も買いませんでした」と投資会社ガーバー&カワサキのロス・ガーバーCEOは言う。ガーバーCEOの会社も購入はしなかった。その代わりにマスクCEOとライブ兄弟が売りに出された1億2400万ドルの太陽光債のうち1億ドルを購入した。昨年も同様に1億6500万ドル相当の太陽光債を購入した友好的なバイヤーがいた。スペースXだ。スペースXはソーラーシティに別に9000万ドルを貸し付けると確約した。またソーラーシティは将来キャッシュフローを億万長者のジョージ・ソロスが助言するファンドに売却することで3億500万ドルを調達した。

テスラもまた財務安定性の面で模範的とはいえず、過去5年間でソーラーシティより多い25億ドルを失っている。またテスラは2013年から四半期の利益がない。この夏、マスクCEOは従業員にコスト削減を強く求めた。テスラ モデル3の生産工場とネバダ州の巨大バッテリー工場の完成を急いでまたもや大金を費やす前に、第3四半期は黒字に転換させようとしたのだ。先週のテスラの発表では、第3四半期は第2四半期より70%多く車を供給したが、それで利益が出たかどうかは、あと数週間は明らかにされないだろう。「投資を考えている人々に我々に賭けようと納得させるには、『テスラ、またもや赤字』ではなく『テスラ、予想に反して黒字に転換』という見出しのほうが圧倒的に有利であるのが単純な現実だ」。マスクCEOはこの夏に社内に向けた文書でそのように記した。そして「そうなったらすばらしい!」とも書いた。(マスクCEOはこの件についてコメントを拒否した)。

すべてを達成するための資金をマスクCEOが調達できたら、それもまたすばらしいことだ。アナリストの試算では、テスラはテスラ モデル3の生産とバスと18輪トレーラーの開発のために、来年10~20億ドルを調達する必要がある。もしテスラがソーラーシティ買収を計画通りに進めれば、30~40億ドル必要になるかもしれないとガーバーCEOは言う。ソーラーシティはニューヨーク州バッファローに巨大工場を建設中だ。今年初め、マスクCEOは自分の壮大な計画には何百億ドルという金がかかるだろうと発言したが、そのうちどの程度を自身の会社のキャッシュフローから調達するつもりかは明らかにしなかった。合併発表後2か月でテスラ株が10%下落したのはそれが主な理由だ。「私が投資するのは、その金を使うのがテスラ側だとはっきりしている場合のみです」とガーバーCEOはいう。ガーバー&カワサキはソーラーシティ合併の発表後、テスラ株の20%を売却した。ガーバーはテスラかソーラーシティの株主が秋の議決で合併を否決することを期待している。「キャッシュフローがマイナスの会社に最も必要ないものは、同じようにキャッシュフローがマイナスで …

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