KADOKAWA Technology Review
×
いまならワンコインで購読できます!
お試しキャンペーン
スポンサード・バイ・Toshinao Sasaki さん
この記事は有料会員限定記事ですが、会員のスポンサードによって無料で表示しています。
あなたも有料会員になりませんか? 有料会員登録
議会での的外れな質問防げ、
ハーバード大学が議員向け
「AIブートキャンプ」実施
知性を宿す機械 Harvard wants to school Congress about AI

議会での的外れな質問防げ、
ハーバード大学が議員向け
「AIブートキャンプ」実施

日本ではパソコンを自分で打たないサイバーセキュリティ担当大臣が話題だが、米国では議員の人工知能(AI)に対する知識不足が問題となっている。ハーバード・ケネディー・スクールの主任研究員らが立ち上げたイニシアティブでは、議員らを対象としたブートキャンプ(集中特訓)を実施し、AIのテクノロジーや倫理的問題について学んでもらう考えだ。 by Karen Hao2018.11.20

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)が米国議会で証言に立ったとき、テクノロジーの専門家たちは議会側の質問者たちがいかに知識不足であるかをすぐに理解した。議会がいかにテック界の巨獣を取り締まろうとしても、どうすればよいのか分かっていないことは明らかだった。そのため、フェイスブックを取り締まる代わりに、「人工知能(AI)がフェイスブックの問題をすべて解決してくれる」などという夢物語によってまんまとかわされてしまった。

米国の政治家たちを主要なテクノロジー問題、とりわけAIへの取り組みをスピードアップさせるためにしつける必要がある、と主張するのが、ハーバード・ケネディ・スクール(HKS)の主任研究員であるディパヤン・ゴーシュ博士だ。

「AIは広範で奥の深いテクノロジーですが、世の中で独り歩きしてしまっていることに非常に顕著な問題があるのです」とゴーシュ博士はいう。ゴーシュ博士はオバマ政権下でテクノロジー政策顧問を務めていた人物である。「AIシステムが実際にどのようにして機能するのかを、それなりの地位にある人々に知ってもらう必要があります。そうすれば、次に彼らが規制に取り組む際に情報不足という状態にはならないでしょう」。

ゴーシュ博士は11月14日に立ち上がった新たなAI政策イニシアチブの共同主導者だ。もう一人の共同主導者であるトム・ウィーラーはHKSの上級主任研究員で、オバマ政権下で米国連邦通信委員会(FCC)の委員長を務めていた。

このイニシアチブは、HKSのショレンスタイン報道・政治・公共政策センターから資金提供を受け、AI倫理とAI規制に関する法的・学術的知識を広げることに焦点を当てる。さらに、米国議員向けにブートキャンプ(集中特訓)を企画し、テクノロジーについて学んでもらう考えだ。これらの取り組みによって、議員や他の政策立案者らが必要な知識を身につけ、世の中で増大しつつあるAIの影響を効果的に規制し、誘導していくことを狙っている。

この1年に注目を浴びた一連のテック業界のスキャンダルによって、AIの取り扱い方を誤った場合にどうなるかがますます明確になってきた。機械学習を使ってソーシャルメディアで偽情報を拡散したり、顔認識やその他の自動システムを通して偏見や差別行為を自動化したりすることがその一例だ。

10月16日にニューヨークで開催されたニューヨーク大学AIナウ研究所(AI Now Institute)主催の「AIナウ 2018シンポジウム」では、テクノロジスト、人権活動家、法律専門家らが、AIの使用における説明責任の必要性を繰り返し強調した。

「政府には長期的な展望が必要です」というのが、全米黒人地位向上協会(NAACP)弁護支援・教育基金のシェリリン・イフィル会長兼代表執行役員法律顧問だ。「政府にはこうしたテクノロジーを開発する企業に対して、これまでの経緯をさまざまな方法で伝達していく責任があるのです」。

しかし政府は責任を果たすだけの知識を持ち合わせていないとゴーシュ博士はいう。「議員に『AI は偽情報問題の一因でしょうか? 』と尋ねたら、そうは思わないとか、分からないと答えるでしょうね」。

イニシアチブの一環として、ゴーシュ博士とウィーラー上級主任研究員はコンピューターサイエンス、哲学、経済学、その他の分野の専門家およそ30人に、差別、平等性、 透明性、説明責任などの問題について意見交換に参加してもらうように依頼した。

イニシアチブに参加する研究者の意見は向こう数カ月にわたって発表されることになっている。最初の3つが、11月12日の週に発表された。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のキャサリン・タッカー教授の「偏見的アルゴリズムに関する経済学的解釈」、データと社会研究所(Data & Society Research Institute)の主任研究員および創業者であるM.C. エリシュとダナ・ボイドの「既存の不正を悪化させずにAIシステムを使うタイミングと方法」、南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム大学院のジョセフ・テュロウ教授の「高度にパーソナライズされたマーケティングの差別的な結果」である。

イニシアチブでは、ワシントンDCで2019年2月に国会議員およびテクノロジー政策担当者たちのために集中特訓を開催し、こうした意見を生産的な政策に反映させるのを支援する。集中特訓では、AIを倫理的に設計するとはどういう意味か、AIの害悪を低減し、恩恵を促進するにはどんな規制手段をとるべきかなどを探っていく。

ゴーシュ博士は、現在の政治状況ではどんな目標であれ、共和党と民主党をそろって同じ方向に向かせることは困難であることを承知している。しかし、事の緊急性を鑑みて、両党が共通の立ち位置を見い出すであろうことを期待している。

人気の記事ランキング
  1. Ten big global challenges technology could solve テクノロジーが解決すべき「世界の10大課題」
  2. The 10 worst technologies of the 21st century セグウェイから電子たばこまで、「残念なテクノロジー」10選
  3. Ryugu is a heap of space rubble that might unlock the mysteries of water on Earth はやぶさ2の探査結果が続々 原始地球の謎解明も
カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 AI担当記者
MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月150本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Ten big global challenges technology could solve テクノロジーが解決すべき「世界の10大課題」
  2. The 10 worst technologies of the 21st century セグウェイから電子たばこまで、「残念なテクノロジー」10選
  3. Ryugu is a heap of space rubble that might unlock the mysteries of water on Earth はやぶさ2の探査結果が続々 原始地球の謎解明も
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る