中国の研究チームが発見した「量子暗号を破る」新手法
物理法則によってメッセージの秘匿性を保証する量子通信が、強固なセキュリティを求める企業や組織に注目されている。しかし、物理法則が完璧なセキュリティを提供しても、実際の機器は決して完璧にはなりえない。中国の大学の研究チームが、これまでとはまったく異なる方法で、量子通信を高い確率でハッキングできることを示す研究を発表した。 by Emerging Technology from the arXiv2019.03.26
量子通信がもたらすものとして大いに期待されているのが、完璧なプライバシーだ。宇宙のある地点から別の地点へとメッセージを送信する際に、誰かがそれを盗み見るのを物理学の法則そのものによって防ぐことができるのである。
とはいえ、こうした話はハッカーにとって、雄牛の前で赤い旗を振るようなものだ。2000年代初頭に量子暗号システムが初めて商用化されて以来、ハッカーたちは暗号を破ろうと何度も試み、かなりの成功を収めてきた。こうした攻撃は、量子情報を送る装置が持つ不完全性に容赦なくつけこんできた。ハッカーたちは攻撃を通じて、たとえ物理学の法則が完璧なセキュリティを提供していても、機器は決して完璧にはなり得ないことを示してきた。こうした機器の不完全性が、ハッカーにつけこまれる抜け穴を生むのだ。
量子物理学者たちは迅速な対応を迫られ、機器に頼らない新しいプロトコルを開発してきた。いわゆる「デバイス非依存量子暗号」は、機器が完璧でない場合にも完全なセキュリティを提供する。少なくとも、理論上は。
だが、量子暗号の実装をめぐる恐ろしい真実はこうだ。どこかの誰かが、何か重要なことを見落としている可能性は常にある。そして、その見落としをハッカーが狙う。
中国の上海交通大学のパン・シャオリン(Xiao-Ling Pang)らの研究チームは、そのような見落とされた要素の1つを発見したと発表している。パンたちが発見した手法を用いると、デバイス非依存量子暗号を恐ろしいほど高い確率でハッキングできるという。
まずは背景を少し説明しておこう。大部分の量子暗号システムは、光子を使って情報を暗号化する。アリスがボブに光子を送り、ボブはその光子を測定して情報を解読する。
このプロセスが拠り所としているのは、光子の量子的な特性を測定すると、光子によって運ばれる情報が必ず変化するという事実である。もし、誰かメッセージを覗き見ようとする者(イブと呼ぼう)が現れた場合、アリスとボブは、イブが元のメッセージにもたらした変化によって、盗聴者の存在を検知できるのだ。盗聴の証拠を見つけたら、2人は最初から通信をやり直す。そう、誰にも盗聴されていないと確認できるまで、データの再送信を繰り返すのである。
もちろん、アリスはこの手法を使って秘密のメッセージを送るわけにはいかない。実際に盗聴された後にしかイブ …
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