KADOKAWA Technology Review
×
成否は運では決まらない? ビッグデータが導く「失敗の力学」
Ms. Tech | Edison: Library of Congress, Bulb: Pixabay
ニュース Insider Online限定
How the data mining of failure could teach us the secrets of success

成否は運では決まらない? ビッグデータが導く「失敗の力学」

成功と失敗の違いはどこにあるのか?ノースウェスタン大学のデータ科学者らが、3種類のビッグデータを分析した研究成果を発表した。試行を繰り返して、経験からの学習のレベルがあるしきい値を超えた時にはじめて、成功への道が開けるという。 by Emerging Technology from the arXiv2019.04.18

トーマス・エジソンはしばしば、米国でもっとも偉大な発明家と言われる。発電、録音、電球などは彼の発明の成功例の一部だ。

しかし、エジソンも失敗を経験しなかったわけではない。エジソンが商用電球の最初の成功を収めた炭素フィラメントに行き着く前に、1000もの異なる設計をテストしたのは有名な話である。この粘り強さこそが、彼が他の人々と一線を画している所以だ。「人生における失敗の多くは、何かをあきらめた時点で、それがどれほど成功に近かったかに気付かなかった人々によるものなのです」とエジソンは言っている。

多くの研究者やグループが、成功の本質について研究をしているが、得られている知見はまちまちだ。一方、失敗の本質についてはあまり研究されていないが、こちらの方がはるかに重要かもしれない。失敗の力学をつかさどる仕組みについて、我々はほとんど何も知らない。

イリノイ州エバンストンにあるノースウェスタン大学のイーアン・インと同僚らによる研究は、そうした状況を、少なくとも部分的に変えつつある。インらのチームは、研究資金の調達を試みた研究者たち、成功したスタートアップ企業、それにテロ組織を追跡した巨大な3つのデータセットから失敗の本質を分析することで、失敗の力学と、成功と失敗を分ける初期段階の兆候を明らかにする研究を実施している。

同チームが用いる手法は、3つのデータセットの分析に基づいている。1つ目のデータセットは、1985年から2015年の間に米国立衛生研究所(NIH)に提出された、健康に関するすべての研究提案だ。

NIHは生物医学的研究のための世界最大の資金源である。そのため、データセットの量は膨大で、13万9091人の研究者が提出した77万6721件の応募案件が含まれる。さらに、研究提案に対して資金が提供されたかどうか、すなわち、成功したかどうかの情報も含まれている。

2つ目のデータベースは、米国ベンチャーキャピタル協会(National Venture Capital Association)の公式データベースである「ベンチャーエキスパート(VentureXpert)」に含まれるスタートアップ企業に対する投資記録だ。この記録は、1970年から2017年の間にベンチャーキャピタリストが資金を提供したすべてのスタートアップの運命を追跡しており、25万3579人のイノベーターが関わる5万8111社の情報を網羅している。

ここでは、スタートアップ企業が創 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
  2. The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
  3. Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
  4. Why OpenAI’s new model is such a big deal GPT-4oを圧倒、オープンAI新モデル「o1」に注目すべき理由
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者は11月発表予定です。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る