AIは「動物並み」に賢いか
適応能力や常識を競う
「動物・AIオリンピック」
英ケンブリッジ大学などの研究チームが「動物・AIオリンピック」を6月に開催する。コンペでは、動物の知能テストなどに使われている100種類のタスクを人工知能(AI)エージェントに実行させることで、AIを一般家庭や日常で広く使うときに必要となる多様な環境への適応能力や常識的判断の能力を競う。 by Oscar Schwartz2019.04.05
イソップ寓話の1つに、のどが渇いたカラスと少量の水が入った水差しの話がある。くちばしが水に届かず、水差しを倒すこともできなかったカラスは、水差しの中に小石を1つずつ落とし入れてくちばしが届く高さまで水位が上げ、水を飲む。この寓話でイソップは、腕力よりも知性が優ることを示した。
イソップ寓話誕生から2500年を経て、人工知能(AI)がイソップの古代知能テストを突破できるか確認できるかもしれない。6月に開催される「動物・AIオリンピック(Animal-AI Olympics)」で、研究者はアルコリズムを訓練して、これまで動物の認知テストに使用されてきた一連のタスクを習得させる。賞金総額1万ドルのコンペだ。
AIの性能評価では、世界最強の囲碁棋士を打ち負かしたり、ビデオゲームを一から習得する方法を考えたりするなど、単一タスクの習得を基準とすることが多い。 AIはそのような分野で並外れた成功を収めてきた。しかし、ある特定のタスクに優れたAIシステムをまったく別のタスクに適用すると、ほとんどの場合お手上げ状態になる。動物・AIオリンピックで、1つのAIエージェントにこれまで見たことのない100種類のタスクに取り組ませる理由はそこにある。ここでテストされるのはある特定の知能ではなく、単一エージェントの多様な環境への適応力だ。これは、AIを一般家庭や日常生活で広く利用するために必要となる常識的判断、すなわち、汎用知性の一部の形式を実証することになる。コンペ主催者は、あらゆる状況に完璧に適応し、満点を出すAIシステムが出るとは考えていないが、直面するさまざまな問題に臨機応変に取り組めるシステムの登場を期待している。
この動物・AIオリンピックを企画したのは、英ケンブリッジ大学のAI研究所「フューチャー・オブ・インテリジェンス研究所:CFI(Leverhulme Centre for the Future of Intelligence)」のチームと、チェコのプラハに拠点を置く研究機関「グッドAI(GoodAI)」だ。今回のコンペは、動物認知研究者とコンピュータ科学者、哲学者を集めた学際チームにより、人間と動物、機械の考え方の違いと類似点を検討するCFIの「カインズ・オブ・インテリジェンス(Kinds of Intelligence)」というプロジェクトの一環だ。ほとんどのタスクは通常、動物の知能テストに使用されるものだが、人間の領域にも足を踏み入れ、乳幼児の認知テストに使用されている課題も一部含まれる。CFIのポスドク研究者であるマシュー・ クロスビー博士は、将来の課題は人間の認知タスクを多く含んださらに複雑なものにしたいと考えている。
コンペに参加する研究者たちは、物理的な実体のあるロボットを開発するよう求められるのではない。その代わり、コンペのプロジェクトリーダーであるマルタ・ハリー …
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