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Doctor Behind Knock-Off “Cancer Moonshot” Meets with Trump

際どい評判の中国系医師、トランプ次期大統領と会食

「がんとの戦いに勝つ」という活動の宣伝に余念がない金持ちドクター by Michael Reilly2016.11.22

世界一の金持ちドクター」 と称される人物が、ドナルド・トランプ次期大統領の増え続ける友人リストに入ったようだ。

19日、革新的な性格とビジネスの洞察力で知られるパトリック・スン・シオン(億万長者の医療起業家)がトランプ次期大統領と夕食を共にした。。アブラクシス・ファーマシューティカルズ(開発した薬剤「アブラキサン」ががん治療に効果的であると示した)を設立し、2010年に、29 億ドルの高評価でセルジーンに売却した。

スン・シオンは宣伝がうまく、自己の売り込みを怠らず、金儲けが非常に得意な人物としても知られている。

スン・シオンは、経営権を握る親会社ナントワークス(評価額は数十億ドル)の事業を売却してカネに変えてきた。その内の1社で今年前半に上場したナントヘルス(上場時の評価額は約15億ドル)は、病院が医療機器を連携できるテクノロジーを提供し(同社が言うには)、治療の改善に資するような患者データを常時提供できるという。しかし個人的に設備を見学した人でさえ、スン・シオンが本当は何を売ろうとしているのか理解できないでいる。2015年には2人の幹部が「会社は米国政府をだましている」として会社を訴えた。にもかかわらず、スン・シオンは昨年、CEOとして1億4800万ドルもの報酬を得た。

Patrick Soon-Shiong
パトリック・スン・シオン

今年はじめ、オバマ大統領の最後の一般教書演説で「がんムーンショット」プロジェクトの責任者にジョー・バイデン副大統領が指名される直前、スン・シオンは「がんムーンショット2020」を立ち上げた。

先取りに成功した大統領演説にも匹敵するような高邁な言葉で、プロジェクトのWebサイトは「目的はがんとの戦いに勝つことであり、近い将来、糖尿病やぜんそくのような慢性疾患と同じようにがんにも対処できるようにすることです」と述べている。また、がんとの戦いのため、ゲノムデータを利用し、免疫系の潜在力をフルに引き出すといった、連邦政府のがんムーンショットと同様の言葉が使われている。

しかし実際には、適当な流行り言葉を散りばめ、がん研究の新興分野にリップサービスしながら、自分のプロジェクトが一番だと宣言しているにすぎない。

すでに指摘されているとおり、スン・シオンはがん免疫学の研究者ですらない。もっとも成功した「アブラキサン」は、がん細胞を死滅させる化合物の伝達メカニズムを改善した薬剤だが、化合物は1990年代から存在している。現在最も有望ながん治療法には、実際に免疫系を活用している場合もあるが、ひいき目に見てもスン・シオンはかなり出遅れ気味だ。「ムーンショット」という名称の権利を確保して「私が先だ!」ともいえない恐れがある。MDアンダーソンがんセンターは、2012年からこの名称を使用していると主張し、商標権侵害でスン・シオンを訴えているのだ。

それでも、スン・シオンが最終的に勝利する可能性もある。「がんムーンショット2020」の発表時、ホワイトハウスやFDA(食品医薬品局)、国立衛生研究所の後ろ盾があると主張していたが、連邦政府が副大統領主導のプロジェクトを立ち上げると引っ込めてしまった。

しかし、スン・シオンが次期大統領に真剣に話を聞いてもらえたら、がんの資金調達や研究分野で、すぐにも米国最大の有力者の1人になるかもしれない。もしそんなことが実現したら、派手なパフォーマンスは期待できる。しかしおそらく、がんとの戦いは、進展しないだろう。

(関連記事:Endpoints, ForbesFortune, “Biotech’s Coming Cancer Cure”)

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クレジット Photograph by Darren McCollester | Getty
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
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