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「リブラは米ドルにとって脅威でない」セントルイス連銀総裁語る
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We’ve had private currencies like Libra before. It was chaos.

「リブラは米ドルにとって脅威でない」セントルイス連銀総裁語る

フェイスブックの新暗号通貨「リブラ」は、従来の国家通貨を脅かす存在になり得るのだろうか。米国の中央銀行の1つであるセントルイス連邦準備銀行のブラード総裁は、約200年前の米国を例に挙げて、リブラが米ドルに取って代わることはないと語った。 by Mike Orcutt2019.08.06

政府の後ろ盾のある通貨が、世界を支配している。だが近いうちに、私的デジタル通貨という形の正当な挑戦者と相対することになるかもしれない。フェイスブックのような巨大企業がそうした通貨を発行すればなおのことだ。この動きは金融システムにどのような影響を与えることになるのだろうか?

歴史の示すところによれば、「人々はそのような通貨を好まないでしょう」。そう語るのは、セントルイス連邦準備銀行のCEO(最高経営責任者)であるジェームズ・ブラード総裁だ。

セントルイス連邦準備銀行は、米国各地に存在する12行の中央銀行支店のうちの1つだ。ブラード総裁は、7月19日にニューヨークで開かれた中央銀行関係者向けの学術会議でこの件について語った。ブラード総裁によると、暗号通貨の隆盛によって「非公式通貨」システムへの「横滑り」が起こっているという。

ブラード総裁はこの件についての自身の研究を参照し、米国において公式通貨が存在しないと何が起こるのかという事例は既に存在すると述べた。1830年、米国の通貨供給の90%は私的通貨によるものだった。だがそこで問題が起こった。「鞄に自分の通貨を入れて馬に乗り、別の町に行ったとします。しかし別の町ではその通貨は一対一の比率で交換してもらえません」。異なる通貨間の為替相場は多くの場合、固定化が難しいという理由から変動していた。

ブラード総裁によると、同様の「為替相場の混乱」は現在の外国為替市場でも見られるという。たとえば、米ドルと日本円は年ごとに15%も変動しているが、2国間の経済の基礎的条件(ファンダメン …

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