「現金需要は強い」FRB議長、デジタル版ドルに慎重姿勢崩さず
中央銀行発行のデジタル通貨は「現金離れ」に端を発するいくつかの問題を抱えている他国では恩恵があるかもしれないが、米国の事情は異なるという。連邦準備制度理事会のパウエル議長の見解。 by Mike Orcutt2019.12.10
連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長によれば、デジタル版ドルは、ある問題が求める1つの解決策だ。中央銀行発行のデジタル通貨は世界各地のいくつかのケースで恩恵をもたらすかもしれないが、そうした潜在的な恩恵が「米国という背景において妥当」かどうかは不明だと、パウエル議長は11月下旬、2人の米国下院議員への書簡の中で主張した。
「全体的に見れば、いくつかの国が中央銀行のデジタル通貨を即座に開発しなければならない事情は、米国とは異なります」。パウエル議長の書簡は、2人の議員が10月に送った書簡に答えたものだ。2人の議員はこの書簡で、FRBがデジタル通貨の発行を検討しているかどうかを含め、複数の質問を投げかけていた。
では「事情」とは何なのか? パウエル議長は、いくつかの国では「消費者の急速な現金離れ」が見られるため、中央銀行によるデジタル通貨発行が検討されているとの見方を示す。「現金離れ」は中央銀行にとって重要な意味を持つ。政府は、紙幣や硬貨の供給を通じて消費者決済市場での直接的な存在感を維持しているからだ。完全に民間企業に任せてしまえば、個人や経済に新たなリスクをもたらす恐れがある。
だが、米国での現金需要は「依然として手堅い」(パウエル議長)。2018年、消費者による支払いの26%は現金によるものだった。前年から4%の落ち込みだ(デビットカードとクレジットカードによる決済はそれぞれ28%と23%)。 …
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