KADOKAWA Technology Review
×
米大統領選の民主党候補者選び、電子投票の不具合でいきなり混乱
AP Images
Iowa’s high-tech caucuses crashed, and paper ballots saved the day

米大統領選の民主党候補者選び、電子投票の不具合でいきなり混乱

米大統領選へ向けた最初の予備選挙がいきなり投票でつまづいた。新たに導入された電子投票システムの不備によって混乱が生じている。 by Patrick Howell O'Neill2020.02.14

2020年の米大統領選へ向けた米民主党の候補者を決める最初の予備選挙が、アイオワ州で2月3日に実施された。だが、2月4日正午時点では結果はまだ判明していない。集計アプリのバグと、電話を使ったバックアップ・システムの障害が原因だ(日本版編注:2月13日現在も最終結果は確定しておらず、民主党アイオワ州支部のトロイ・プライス委員長は引責辞任した)。

民主党は「集計の不一致」問題に取り組んでいるが、原因は電子投票集計システムのハッキングではないという。民主党は現在、紙の投票用紙を集計して結果を確定しようとしている。

投票機器メーカー「ハート・インターシビック(Hart InterCivic)」の元幹部であるオープンソース選挙技術研究所(Open Source Election Technology Institute)のエディ・ペレスは、「紙の記録が非常に大事であることを示す、とても明確な教訓です」と述べる。「支持する大統領候補の名前を記した紙の投票用紙が残っていなければ、信頼は完全に失墜していたでしょう」。

選挙テクノロジーおよびセキュリティの専門家は以前から、電子投票システムは安全でもなければ信頼性もそれほど高くないと警告してきた。今回のケースでは、民主党アイオワ州支部が新しいアプリを導入したことで問題が複雑化した。このアプリは厳しいテストを経ていない急ごしらえのもので、連邦政府のサイバーセキュリティ専門家からの支援の申し入れも辞退していた。

システム障害が壊滅的な結果を招くことなく、投票結果が2月4日遅くには確定すると予想される主な理由は、紙のバックアップにある。

ワシントンDCのシンクタンク「民主主義を守るための連合(Alliance for Securing Democracy)」のデビッド・レビンは、「紙ベースのシステムがあれば、外国からの干渉の可能性を減らすだけでなく、結果の完全性が損なわれたり、不正確になったりする可能性を減らせます」と述べる。

「不慮の事故や技術的なミスの場合でも、紙ベースのシステムがあれば選挙結果の検証が可能で、結果の完全性に対する信頼を有権者に与えられます」。

それでもなお、2月3日夜には陰謀論がネット上を飛び交い、ドナルド・トランプ大統領の選挙責任者の工作活動との根拠のない非難もあった。そのような行為は、選挙の完全性や民主的なプロセスについて有権者に疑念を植え付けることになるとレビンは述べる。

「選挙の信頼性は、有権者が投票するかどうかの選択に影響を与えかねません。信頼性は、有権者が選挙の結果を信じるかどうかに影響を与えることがあります。敵対勢力が信頼性の欠如につけ込み、私たちの民主主義の弱点をつく可能性もあります。信頼性は選挙にとって、極めて重要な要素です」。

だからこそ、民主党職員だけでなく、選挙プロセスにハイテクを導入しようとしている人たちは、実際の選挙の前に、自分たちのシステムが入念に検証されていることを確認する必要があるのだ。

ペレスは、「今回、もし民主党がさらなる透明性を確保しておけば、すなわちアプリやアプリの開発者、それに設定や検証のプロセスなどについてもっと情報があれば、民主党職員の説明を信用することができたでしょう」と述べる。「単にソーシャルメディアで発信するだけで容易にデマを生み出せてしまう時代において、公の信頼を得るのに透明性は極めて重要です」。

新しいアプリに当初自信を見せていた民主党アイオワ州支部にコメントを求めたが、回答は得られていない。

人気の記事ランキング
  1. China’s heat wave is creating havoc for electric vehicle drivers 中国猛暑でEVオーナーが悲鳴、電力不足でスタンドに長蛇の列
  2. Brain stimulation can improve the memory of older people 脳への「優しい刺激」で高齢者の記憶力が向上、1カ月持続か
  3. Decarbonization is Japan’s last chance to raise its power 大場紀章「脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス」
  4. Kyoto University startup pioneers the era of fusion power generation 京大スタートアップが拓く、核融合発電の時代
  5. Russia’s battle to convince people to join its war is being waged on Telegram ロシア内戦の舞台は「テレグラム」、親プーチン派と反戦派が激突
パトリック・ハウエル・オニール [Patrick Howell O'Neill]米国版 サイバーセキュリティ担当記者
国家安全保障から個人のプライバシーまでをカバーする、サイバーセキュリティ・ジャーナリスト。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. China’s heat wave is creating havoc for electric vehicle drivers 中国猛暑でEVオーナーが悲鳴、電力不足でスタンドに長蛇の列
  2. Brain stimulation can improve the memory of older people 脳への「優しい刺激」で高齢者の記憶力が向上、1カ月持続か
  3. Decarbonization is Japan’s last chance to raise its power 大場紀章「脱炭素化は日本の力を底上げする最後のチャンス」
  4. Kyoto University startup pioneers the era of fusion power generation 京大スタートアップが拓く、核融合発電の時代
  5. Russia’s battle to convince people to join its war is being waged on Telegram ロシア内戦の舞台は「テレグラム」、親プーチン派と反戦派が激突
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8脱炭素イノベーション

2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて、世界各国で研究開発が加速する脱炭素技術、社会実装が進む気候変動の緩和・適応策などGX(グリーン・トランスフォーメーション)の最新動向を丸ごと1冊取り上げる。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る