KADOKAWA Technology Review
×
動画生成AI「Sora」の問題点とは? 知財専門家が解説【11/12緊急開催🚨】
アップルとグーグルの接触者追跡技術、位置情報の併用を禁止
Photo by Jezael Melgoza on Unsplash
Google and Apple lay out rules for contact tracing apps

アップルとグーグルの接触者追跡技術、位置情報の併用を禁止

アップルとグーグルは、iOSおよびアンドロイドへの組み込みを予定している接触者追跡システムの利用に関する新たなルールを発表した。ユーザーのプライバシーを維持し、悪用の可能性を防ぎつつ、同システムを広く展開できるようにすることが狙いだ。 by Patrick Howell O'Neill2020.05.10

アップルとグーグルは、両社が提供する予定のアイフォーン/アンドロイド端末向けの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)追跡テクノロジーで、位置情報トラッキングの使用を禁止すると発表した。この発表により、両社のシステムを使って新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者との接触可能性を利用者に通知することを計画していたいくつかのアプリの開発が、微妙な状況に置かれる可能性がある。

接触者追跡とは、伝染病患者に接触した可能性のある人物を追跡して通知するプロセスであり、専門家は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の中で社会が通常の状態に戻るために不可欠なツールだと見ている。だが、接触者追跡の大部分は非常に泥臭い作業であり、米国だけでも数万人の人員の関与が必要だ。アップルとグーグルは、世界各国の公衆衛生当局が接触者を追跡し、感染者との接触を通知するアプリを構築するための土台となる技術(API)を開発している。これによって、人手による作業を軽減できる可能性があることから、多くの人たちから歓迎されている。システムの完成版は、Bluetooth信号によって利用者が新型コロナウイルス感染症の患者とどれくらい接近したかを判断するもので、5月中旬のリリースが予定されている。アプリ開発者らには現在、このシステムの早期バージョンが提供されている。

アップルとグーグルは5月4日に、位置情報の共有を禁止すると共に、開発者に対していくつかの開発要件を公開した。その内容は、政府の公衆衛生当局だけがアプリを開発できる、すべてのアプリは「Exposure Notification API」を利用する前にユーザーの同意を得なければならない、陽性が出た場合の検査結果や「診断キー」を公衆衛生当局と共有する前に2度目の同意を得る必要がある、といったものだ。つまり、データの収集は最小限に留めなければならず、公衆衛生のためだけに利用できるということだ。その他の目的でのデータ利用は禁止され、ターゲティング広告や取り締まりなどには利用できない。

両社が開発している追跡テクノロジーは、異なるシステム間の分断を避け、すべてのスマートフォンが共同で機能することを目的としており、iOSおよびアンドロイド、つまりスマートフォンの大多数を占めるOS内に組み込まれることになる。これは接触者追跡を成功させるための重要な要件の1つだ。ユーザーのプライバシーを維持し、悪用の可能性を防ぎながらも、接触者追跡テクノロジーを展開しようという試みだと言える。

関連記事:新型コロナウイルス感染症に関する記事一覧

人気の記事ランキング
  1. Promotion MITTR Emerging Technology Nite #35 Soraの問題点とは? AI時代の知財を考える11/12緊急イベント
  2. What a massive thermal battery means for energy storage 1000℃のレンガで熱貯蔵、世界最大の蓄熱電池が稼働
  3. I tried OpenAI’s new Atlas browser but I still don’t know what it’s for 誰のためのブラウザー? オープンAI「Atlas」が残念な理由
  4. An AI adoption riddle AIの試験運用は失敗続き、それでもなぜ投資をやめないのか?
パトリック・ハウエル・オニール [Patrick Howell O'Neill]米国版 サイバーセキュリティ担当記者
国家安全保障から個人のプライバシーまでをカバーする、サイバーセキュリティ・ジャーナリスト。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
気候テック企業10 2025

MITテクノロジーレビューは毎年、気候テック分野で注目すべき企業を選出し、その一覧を発表している。 今回で3回目となる本特集では、なぜこれらの企業を選出したのか、そして米国の政治的変化をどのように考慮したのかについても詳しく解説している。併せてお読みいただきたい。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る