KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
中国がティックトックや翻訳サービスで世界を監視する方法
Rohan Thomson
倫理/政策 Insider Online限定
How China surveils the world

中国がティックトックや翻訳サービスで世界を監視する方法

中国共産党は国内外の企業を通して、膨大な量のデータを世界中から収集している。中国の監視社会に関する世界有数の研究者に、中国がデータをどのようにして収集し、何をしようとしているのか聞いた。 by Mara Hvistendahl2020.09.07

中国は、自国民のデータを大量に収集しているだけではない。国内外の企業を使って、自国の国家安全保障にいつか利用できそうなデータを世界中から吸い上げている。中国の監視社会に関する世界有数の専門家であるオーストラリア戦略政策研究所のサマンサ・ホフマン博士は昨年、この状況に光を当てた報告書「エンジニアリング・グローバル・コンセント(Engineering Global Consent)」を執筆した。同報告書は、中国の世界的なデータ収集戦略の中心的役割を担う国営の翻訳専門会社であるGTCOMに焦点を当てている。中国がどのようにしてデータを収集し、何をしようとしているのか、ホフマン博士に聞いた。

なお、このインタビューは、発言の主旨を明確にするために編集および要約されている。

◆◆◆

——中国共産党はどのようにデータを収集しているのでしょうか。

共産党の扱うデータには、テキストメッセージ、画像、映像、音声などさまざまな形式があります。中国国内ではこうしたデータへ直接アクセスできますが、世界中のデータへアクセスする場合には、党は国有企業や国内外のテック企業、大学研究者などのパートナーを利用します。

中国共産党は、顔認識機能のあるカメラなどプライベートを侵害する監視テクノロジーを通してデータを収集しているだけではありません。スマートシティに関連付けられたデバイスなど、日常のサービスを提供するテクノロジーも利用しています。人工知能(AI)や「ビッグデータ」という言葉が広く使われるようになるよりもずっと前から、単に強制するのではなく、党の管理下に入るよう社会を取り込むことが党の狙いでした。

——党はこのデータを使って何をしているのでしょうか。

とりあえず大量にデータを収集し、それをどうするかは後で考えます。全てのデータに今すぐ利用価値が見いだせなかったとしても、将来的に使えるようになる技術能力の開発を見込んでいます。

大量のデータセットからは、人間の行動様式や傾向が見えてきます。それらが、中国共産党の諜報活動、プロパガンダ、監視に役立てられます。データの一部は、社会信用システムなどのツールへ入力され、画像や音声データなどの大量データは、顔認識や音声認識のアルゴリズムを訓練するためにも用いられます。

中国共産党のやり方は、世界の広告業界がやっていることとさほど変わりはありません。ただし、製品を売ることではなく、権威主義的な統制を行使することが目的です。資本主義を道具に使って、民主的なプロセスを妨げるデータへアクセスし、自分たちの権力に都合のいい世界環境を作ろうとしているのです。

——なぜこれが中国の国外で脅威となるのでしょうか。

自由民主主義国家の市民が、テック企業による個人データの …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る