KADOKAWA Technology Review
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ディープマインド、生物学における50年越しの難問をAIで解決
CASP / DeepMind
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DeepMind’s protein-folding AI has solved a 50-year-old grand challenge of biology

ディープマインド、生物学における50年越しの難問をAIで解決

ディープマインドが開発した新たなアルゴリズムは、タンパク質の構造を原子サイズで正確に予測できる。この画期的な進歩は生物学における50年越しの難問を解決し、新薬の開発や疾病の解明に取り組む科学者らにとっても大きな進展をもたらすだろう。 by Will Douglas Heaven2021.01.19

ディープマインド(DeepMind)はこれまでにも連勝街道を突き進み、人工知能(AI)が囲碁から「スタークラフト(StarCraft)」、アタリ(Atari)の各種ゲームに至るまで、さまざまな複雑なゲームを超人的なスキルでプレイする方法を身に付けられることを示してきた。しかし、ディープマインドの顔であり、共同創業者であるデミス・ハサビス最高経営責任者(CEO)は、こうした成功はより大きな目標を達成する足がかりに過ぎないと強調してきた。その大きな目標とは、私たちが住む世界の理解向上に役立つAIの実現である。

2020年11月30日、ディープマインドおよび長年にわたって競われてきたタンパク質構造予測精密評価(Critical Assessment of protein Structure Prediction:CASP)コンペの主催者が、ハサビスCEOが追い求めてきた大きな目標達成の可能性を持つAIの存在を明らかにした。ディープマインドが持つ、原子サイズの範囲内でタンパク質構造を正確に予測する深層学習システム「アルファフォールド(AlphaFold)」の最新バージョンが、生物学における難問の1つを解決したのだ。CASPの運営チームを率いるメリーランド大学のジョン・モルト教授は、「生物学の重大な問題解決にAIが利用された、初めての例です」と述べる。

タンパク質は、非常に複雑に捻じれて折れ曲がり、絡み合って折り畳まれたリボン状のアミノ酸で構成されており、この構造がタンパク質の機能を決定している。タンパク質の働きの解明は、生命の基本的なメカニズムや、タンパク質が機能するタイミングを理解する鍵となる。たとえば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、ウイルスのスパイクタンパク質に注目している。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がどのように人間の細胞にくっつくかは、スパイクタンパク質の形状や、人間の細胞の外側にあるタンパク質の形状によって決まってくる。これらのタンパク質は、全ての生命体が持つ数十億のタンパク質のうちの1つであり、人体だけでも数万種類のタンパク質が存在している。

2020年のCASPコンペにおいて、アルファフォールドは、数十種類のタンパク質の構造を、原子と同じ大きさであるわずか1.6オングストローム(0.16ナノメートル)の誤差で予測した。これは他のあらゆる計算手法を圧倒的に上回っており、低温電子顕微鏡法、核磁気共鳴、X線結晶構造解析といった、研究所でタンパク質の構造を精密に解明する実験手法と同様の精度を初めて実現した。研究所で利用されているこれらの実験手法は、1つのタンパク質に対して数十万ドルと数年に及ぶ試行錯誤を要するなど、高コストで時間がかかる。アルファフォールドなら、1つのタンパク質の形状を数日間で解明できる。

この画期的な進歩によって、研究者らは新薬の設計や疾病への理解を前進させられる可能性がある。タンパク質構造の予測は、長期的に見れば、廃棄物の分解やバイオ燃料の生成が可能な酵素をはじめとする人工タンパク質の設計にも役立つだろう。また、研究者らは、穀物の収穫量を増やしたり、植物の栄養価を高めたりする人工タンパク質を実現させる方法も模索している。

タンパク質構造を予測するソフトウェアを独自に開発している、コロンビア大学のシステム生物学者モハメド・アルクライシ助教授は、「これは非常に大きな進歩です」と述べる。「こんなに早く実現するとは予想していませんでした。ある意味で衝撃的です」。

ワシントン大学タンパク質設計研究所の所長で、タンパク質分析ツールの一種である「ロゼッタ(Rosetta)」の開発チームでリーダーを務めるデビッド・ベイカー教授は、「これには大きな意味があります」と述べる。「アルファ碁(AlphaGo)が囲碁で人間に勝った時と同じくらい、驚くべき成果です」。

天文学的数 …

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