KADOKAWA Technology Review
×
主張:「表現の自由」はSNS企業ではなくユーザーが決めるべきだ
AP Photo/John Minchillo
倫理/政策 無料会員限定
Users, not tech executives, should decide what constitutes free speech online

主張:「表現の自由」はSNS企業ではなくユーザーが決めるべきだ

ツイッターとフェイスブックがトランプ大統領のアカウントを停止したことを評価する向きもあるが、こうしたソーシャル・メディア企業がプラットフォーム上のコンテンツに対して適用しているポリシーは、決して一貫したものではない。 by Jillian C. York2021.01.18

白人至上主義者らが激しい暴動を起こし米国議会議事堂に侵入した事件を受け、ツイッターとフェイスブックはそれぞれのプラットフォーム上でドナルド・トランプ大統領のアカウントを1 月7日に停止した。翌日、ツイッターは停止措置を永久のものとした。ツイッターの対応について多くの人々は、選挙で不正があったというトランプ大統領の虚偽の主張に同大統領の信奉者らが触発されているという状況の中、同大統領が被害をさらに拡大させるのを防いだと称賛した。一方で、共和党員たちは、トランプ大統領の言論の自由の侵害だとして、同社の対応を批判した。

しかし、ツイッターのとった措置は言論の自由の侵害ではなかった。トランプ大統領が合衆国憲法修正第1条により気の触れたナンセンスな意見をぶちあげる権利があるのとまったく同じように、テクノロジー企業も合衆国憲法修正第1条によりそうしたコンテンツを削除する権利がある。ツイッターの決断について一部の有識者は、前例がないとか、エドワード・スノーデンのツイートにあるように「デジタル言論のコントロールを巡る戦いの転換点」だと評した。だが、それはまったく違う。ツイッターもフェイスブックも日常的に、あらゆる種類の法によって守られた表現を削除している。それだけでなく、同社らが政界の重鎮のアカウントを停止したことさえも、トランプ大統領の件が初めてではない。

ミャンマーでの虐殺の報道を受け、フェイスブックは、プラットフォーム上でヘイトを助長していたミャンマーの将軍やその他の軍事指導者のアカウントを停止した。同社はまた、ヒズボラ(Hezbollah)の活動を禁止している。米国が外国テロ組織に指定していることが理由だが、ヒズボラはレバノンの国会に議席を持つ政党でもある。さらには、米国から経済制裁を受けている国家の指導者がアカウントを持つことも禁止している。

同時に、フェイスブックもツイッターも、選挙で選ばれた公人が投稿したコンテンツは、一般人のコンテンツより守られるべきだという主義も貫いている。結果として、政治家の発言は一般人の発言よりも強い影響力を持っている。公人によるヘイトスピーチは一般のユーザーによる同様の発言より影響力が強いことを示す証拠が数多くあるにもかかわらず、このような立場をとっていることは矛盾している。

しかし明らかに、こうした方針は世界中に平等には適用されてはいない。実際、不安の種をソーシャルメディア上にまいている世界のリーダーは、決してトランプ大統領だけではない。インドのナレンドラ・モディ首相の政党であるインド人民党が数ある例の中の一つだ。

トランプ大統領がプラットフォームから追い出されたことで、短期的な恩恵と多大な満足感があることは確かだ。とはいえ、今回のソーシャルメディア企業の決断(とそれ以前に実施されてきた決断)は、言論の根本的な部分について次のような疑問を提起している。我々が何を言って良いとか、何を言ってはいけないとかを決める権利を持つべきなのは誰だろうか? 企業が政府 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
  2. The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
  3. Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
  4. Geoffrey Hinton tells us why he’s now scared of the tech he helped build ジェフリー・ヒントン独白 「深層学習の父」はなぜ、 AIを恐れているのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者は11月発表予定です。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る