KADOKAWA Technology Review
×
主張:対価義務付けだけではない、ジャーナリズム復興のアイデア
Ms Tech | Pexels, Unsplash
倫理/政策 無料会員限定
What we can learn from the Facebook-Australia news debacle

主張:対価義務付けだけではない、ジャーナリズム復興のアイデア

ジャーナリズムの衰退は民主主義に危機をもたらす。オーストラリア政府はテック企業に対して記事の対価を支払うよう義務付ける法律を成立させたが、ほかにもアイデアはある。 by Justin Hendrix2021.03.08

世界各地で、民主主義が何らかの危機に瀕しており、民主主義の健康状態を示す指標も、誤った方向へと進んでいる。ニュース産業の衰退がその一因だと見る人は多く、ジャーナリズムに対価を支払う方法を見つけ出すことが喫緊の課題となっている。この課題解決に、野心的な計画を進めている国もある。報道機関が何十億ドルもの収益を再び上げるようなスケールの大きなアイデアは多いわけではない。だが、そのうちのいくつかに賭けてみるべき時が来たようだ。

ジャーナリズムに対価を支払うアイデアのひとつとして、報道機関のコンテンツに貼られたリンクに対価を支払うよう、検索プラットフォームやソーシャルメディア・プラットフォームに義務付けた法律(ニュースメディア取引法)がオーストラリアで成立し、世界的な注目を浴びた。グーグルはこの法律に従い、ニューズ・コープ(News Corp)やナイン(Nine)、セブン・ウエスト・メディア(Seven WestMedia)といった大手企業との取引を決定している。しかし、フェイスブックは別の道を選び、プラットフォーム上で表示されるニュースに対価を支払う代わりに、オーストラリアのユーザーがニュースにアクセスし、シェアすることを完全にブロックした(日本版注:フェイスブックはその後、修正案でオーストラリア政府と合意し、配信を再開)。

反響はすぐに広がった。フェイスブックの行動を独占主義的な意図と、市民による議論への無理解の現れだとして批判するコメントを口にする者ものいた。あるいは、ルパート・マードックのようなメディア業界の利益のためにテック企業を不合理な状況に陥れたとして、オーストラリア政府に対して批判する声も上がっている。

オーストラリアと同様のアプローチは、各国の議員や規制当局が採用を検討している。ロイター通信によると、カナダではスティーブン・ギルボー文化遺産大臣が、オーストラリアの法律をモデルとして独自の法案を作成すると語った。米国ロードアイランド州のデイビッド・シシリーニ下院議員が提出した法案も、「オンライン・コンテンツのパブリッシャーが、コンテンツの配信条件について主要なオンライン・プラットフォームと集団的に交渉するための一時的なセーフ・ハーバーを提供する」というオーストラリアの法律との類似点がある。

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る