KADOKAWA Technology Review
×
金星の雲、生命維持には水が足りない? 期待裏切る新研究
NASA/Goddard/Conceptual Image Lab, Krystofer Kim
宇宙 無料会員限定
Venus doesn’t have enough water in its clouds to sustain life

金星の雲、生命維持には水が足りない? 期待裏切る新研究

金星に生命体が存在する可能性はあるのだろうか。「水分活性」の観点から金星の雲における生物の居住可能性について調べた新たな研究論文によると、木星の雲のほうがまだ、生物の居住に適しているという。 by Neel V. Patel2021.07.01

高温高圧の厳しい環境にある金星に生物が生存することは、実際のところ不可能であろうと長らく考えられてきた。そのため、2020年9月に科学者が、金星の大気中に潜在的な生命体の痕跡となるホスフィンガスを発見した可能性があると発表したとき、金星の雲の中に微生物が生きているのではないか、と考えた者もいた。

だが、その期待は抑えた方がよいかもしれない。ネイチャー・アストロノミー誌(Nature Astronomy)で発表された新たな研究論文は、金星には、私たちが知るような生物を育む十分な水がまったくないことを示している。

「よく知られているように、生物にはもちろん水が必要です」と、クイーンズ大学ベルファストの微生物学者であり、今回の研究論文の筆頭執筆者であるジョン・ホールズワース博士は述べる。同博士らの新たな研究結果によると、金星の雲の水濃度は、地球上で最も回復力のある微生物が生き残るのに必要とする濃度の「100分の1以下しかない」という。「尺度のほぼ底辺にあります。生命が活動するのに必要になるレベルとの間に歴然とした距離があるのです」。

1978年、米国航空宇宙局(NASA)は、オービター(軌道船)と、金星の大気圏に投入された4つの小さなプローブ(探査機)で構成するパイオニア・ヴィーナス(Pioneer Venus)ミッションを打ち上げた。同ミッションでは、金星の大気中には重水素の兆候が見られた。重水素は水の分解から生じる可能性がある水素の重同位体だ。科学者チームは、金星にはかつて大量の水が存在したのではないか、そして、水のいくらかは大気中に大量に残っているのではないだろうかと思った。

2020年まで話を進めると、金星の大気中に微量のホスフィン …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. OpenAI’s new LLM exposes the secrets of how AI really works オープンAI、解釈可能な新AIモデル 幻覚や暴走の原因解明へ
  2. Promotion Innovators Under 35 Japan Summit 2025 2025年のイノベーターが集結「U35 Summit」参加者募集
  3. Quantum physicists have shrunk and “de-censored” DeepSeek R1 量子技術でDeepSeekを55%小型化、「検閲解除」にも成功
  4. How do our bodies remember? 解説:運動をやめても筋肉は覚えている——復帰が速い科学的理由とは
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
気候テック企業10 2025

MITテクノロジーレビューは毎年、気候テック分野で注目すべき企業を選出し、その一覧を発表している。 新たなクリーン・エネルギー源の創出や、食品生産・物流の再構築といった形で経済の主要セクターの脱炭素化に取り組む注目企業10社を紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る