KADOKAWA Technology Review
×
ザッカーバーグも賭ける「メタバース」の夢、その問われる真価
Julia Dufosse
コンピューティング 無料会員限定
The metaverse could actually help people

ザッカーバーグも賭ける「メタバース」の夢、その問われる真価

フェイスブック(「メタ」に社名変更)が今後、事業の核にすると発表した3次元バーチャル空間「メタバース」は、技術系エリートが使うばかげたキャッチフレーズのようにも聞こえるが、現実世界をよりよく変える可能性がある。 by John David N. Dionisio2021.11.04

「メタバース(metaverse、コンピューターによる3次元のバーチャル空間)」について最初に書いたのは、ニール・スティーブンスンだ。1992年発表の小説『スノウ・クラッシュ』の中でのことだった。しかし、ウィリアム・ギブソンの1984年の小説『ニューロマンサー』に登場する「サイバースペース」など、現実世界に代わる電子的な領域の概念はすでに確立されていた。

メタバースは、一般的なインターネットとは対照的に、複数のユーザーが共有する3D(3次元)の没入型環境であり、アバターを介して他のユーザーと交流できる。適切なテクノロジーのサポートがあれば、仕事、遊び、取引、友情、愛などのあらゆる要素を備えた現実生活のように感じられ、独自の世界を形成できる。

メタバースのプロトタイプとして最もよく知られているのは、オンライン・バーチャル世界の「セカンドライフ(Second LIfe)」だろう。その名前のとおり「別の存在」を意味している。「ワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft)」「エバークエスト(Everquest)」「フォートナイト(Fortnite)」「あつまれ どうぶつの森」など、他のゲームもそれなりにメタバースと言えるかもしれない。これらのゲームは、感覚を完全に支配するまでには至らないものの、それぞれ独自の没入型世界を提供している。ほとんどのユーザーは、これらのゲームを外から覗き込むようにして体験する。スクリーンが正面・中央にあり、側面にスピーカーがある。操作には、プレーヤーの手や足ではなく、キーボードやマウス、トラックパッド、ゲームコントローラーなどを使う。

しかし、テクノロジーはそれを変えつつある。高解像度のスクリーン、実質現実(VR)専用のゴーグルやメガネ、サラウンド音響、空間オーディオなどによって、以前よりもリアルな没入感が手の届くところにある。カメラには3D機能が搭載され、マイクロフォンアレイが単一のマイクロフォンに取って代わり、音の深さや位置をより正確に捉えられるようになってきている。現実世界の映像にバーチャル物体を重ねる「拡張現実(AR)」は、純粋なバーチャル体験と、アナログまたは現実の体験との間の橋渡しをする。さらに、マルチタッチ・スクリーンや触覚テクノロジー、操作グローブやその他のウェアラブル製品などによって、触覚を加える方向にも進んでいる。インダストリアル・ライト&マジック(ILM:Industrial LIght and Magic)の「ステージ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る