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米司法省、MIT教授の起訴を取り下げ=チャイナ・イニシアチブ問題
Courtesy of MIT
All charges against China Initiative defendant Gang Chen have been dismissed

米司法省、MIT教授の起訴を取り下げ=チャイナ・イニシアチブ問題

米国司法省は、MITのチェン・ガン教授に対する起訴をすべて取り下げた。チェン教授は、中国による経済スパイ活動や国家安全保障上の脅威に対抗する「チャイナ・イニシアチブ」の下で起訴されていた。 by Eileen Guo2022.01.23

米国司法省は、ナノテクノロジー分野の研究者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学科のチェン・ガン(陳剛)教授に対する起訴をすべて取り下げた。同教授が、中国との関係や資金提供を開示していなかった容疑で起訴されてからちょうど1年後のことだ。

チェン教授は当初から無実を主張していた。MITは、チェン教授は同大学を代表して共同研究をするために活動しており、問題となっている資金はチェン教授個人に対して提供されたものではなく、実際には大学に対して提供されたものであると説明していた。MITはチェン教授の弁護士費用を負担している(MITテクノロジーレビューはMITから資金提供を受けているが、編集上は独立している)。

チェン教授の弁護人であるロバート・フィッシャーは声明を発表し、「私たちが一貫して主張してきたことを、ようやく政府が認めてくれました。チェン教授は無実です」と述べた。さらにこのように加えた。「我々の弁護活動は、法律的なテクニックに基づくものではありませんでした。チェン教授は、起訴されたいかなる犯罪も犯していません。すべてに終止符が打たれたのです。チェン教授は中国の人材プログラムに参加したことは一度もなく、決して中国政府のために働く海外の研究者ではありませんでした。開示すべきことをすべて開示しており、政府や他の誰かに対し、虚偽の報告をしたことは一度もありません」。

チャイナ・イニシアチブ

「チャイナ・イニシアチブ(China Initiative)」は、中国による経済スパイ活動や国家安全保障上の脅威に対抗するために、トランプ前政権下で発足した米国司法省のプログラムだ。チェン教授は、同プログラムの下で起訴された中でも特に注目された研究者の一人だった。

MITテクノロジーレビューの調査によると、チャイナ・イニシアチブはその本来の目的にもかかわらず、企業秘密を盗む産業スパイではなく、中国企業との関係や資金提供を助成金やビザの申請書に記載するなど、「研究の公正性」に関わる学識者の起訴に重点が置かれるようになってきている。本誌の調査で確認したところによると、米国経済スパイ法違反の件数は77件中19件(全体の25%)に留まる一方、学識者による助成金やビザの不正受給とされる件数は23件(全体の30%)にのぼっていた。

さらに、今回の取材で、この司法省のプログラムが中国系の研究者に対して偏った影響を与えていることも明らかとなった。チャイナ・イニシアチブの下で起訴された148人のうち、130人(88%)が中国系だ。

チェン教授の訴訟は、裁判前に起訴が取り下げられた、研究の公正性に関する訴訟として8件目となる。2021年12月には、虚偽報告と所得税申告虚偽の罪でハーバード大学のチャールズ・リーバー教授が6件の有罪判決を受けた。また、テネシー大学ノックスビル校のアンミン・フー准教授に対する裁判は、研究における公正性の訴訟としては初めて陪審員の前で裁判が実施されたが、評決不能となった後、完全な無罪判決が下された。

MITテクノロジーレビュー「チャイナ・イニシアチブ」データベースに掲載された、研究の公正性に関する訴訟

訴訟の分析

チェン教授の起訴は、同教授がナノテクノロジー分野で著名な人物であることに加えて、所属する大学の要請に応じて中国の大学との共同研究に取り組むという、一見すると日常的な研究活動のために起訴された点で、チャイナ・イニシアティブに対する認識と反対の声を高めた。当時、MITの教員らは「私たちは皆、ガン・チェンだ(We are all Gang Chen)」と書簡を書き、チェン教授への支援と、彼ら自身の研究活動が政府の監視下に置かれることへの懸念を表明した。

セトンホール大学の法学部教授で、チャイナ・イニシアチブについての著書があるマーガレット・ルイスは、「今回の刑事事件の終結は、チェン教授にとって素晴らしいニュースであり、弁護団は称賛に値します」と語った。「しかし、チェン教授が2年前に空港で最初に尋問を受け、1年前に起訴されたということを忘れてはいけません。不起訴になっても、人的損失は大きいのです」と指摘した。

さらに、ルイス教授はこう付け加えた。「司法省が近いうちに、個々の訴訟の見直しに関する発表をすることに留まらず、チャイナ・イニシアチブ自体を終わらせるための踏み込んだ声明を発表することを期待しています」。

2018年、チャイナ・イニシアチブが発表される前に誤って起訴された2人の著名な研究者の弁護を担当した米国自由人権協会(ACLU:American Civil Liberties Union )国家安全保障プロジェクトの上級スタッフ弁護士であるパトリック・トゥーミーは、「たとえチャイナ・イニシアチブの戦略を再構築したとしても、十分ではないでしょう」としたうえで、「司法省は、国家安全保障の名の下に人種プロファイリング(人種に基づく捜査対象の選別)を可能にする政策を根本的に改革しなければなりません」と述べた。

声を上げているのは、学術関係者市民団体だけではない。この1年の間にチャイナ・イニシアチブに対する批判が各方面から高まっている。90人もの連邦議員がメリック・ガーランド司法長官に対し、人種プロファイリングに関する調査を要求したほか、司法省の元官僚からも同プログラムの方向転換を求める声が上がっている。

チャイナ・イニシアチブを管轄する司法省の担当部門の元トップであるジョン・デマーズは、研究者がこれまで公開してこなかった関係について、起訴の恐れなく開示できる起訴免除計画の提案に賛成していたと報じられている。一方、MITテクノロジーレビューによる報道を受けて、チェン教授を起訴した元マサチューセッツ州地方検事のアンドリュー・レリングは、学術関係者を標的としたチャイナ・イニシアチブの一部を停止すべきだと主張した。 現在、研究公正性の6件の訴訟が保留となっており、うち4件は今春に裁判が予定されている。

近々、おそらく何らかの発表がなされるだろう。司法省のウィン・ホーンバックル報道官は先週、MITテクノロジーレビュー宛てたメールの中で、「司法省は中国政府による脅威に対抗するための手法について見直しをしています。数週間以内に見直しを完了し、追加情報を提供する予定です」と述べている。

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特集・調査担当の上級記者として、テクノロジー産業がどのように私たちの世界を形作っているのか、その過程でしばしば既存の不公正や不平等を定着させているのかをテーマに取材している。以前は、フリーランスの記者およびオーディオ・プロデューサーとして、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、ナショナル・ジオグラフィック誌、ワイアードなどで活動していた。
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