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サイケデリックス薬は脳にどう影響?自然言語処理で探る新研究
Ms Tech | Unsplash
What do psychedelic drugs do to our brains? AI could help us find out

サイケデリックス薬は脳にどう影響?自然言語処理で探る新研究

マギル大学の研究チームは、薬物使用経験者の体験談の大量の文書を自然言語処理で分析することで、薬物が脳に及ぼす影響を特定しようとしている。精神疾患を治療するより良い医薬品の開発につながるのだろうか。 by Jessica Hamzelou2022.03.23

サイケデリックス医薬品(幻覚剤)は長らく、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患の治療薬として注目されてきた。しかし、これらの物質が私たちの脳に実際にどのような影響を与えるかについては、ほとんど分かっていない。どのように機能するかを理解すれば、その潜在能力を引き出すことができるかも知れない。

人工知能(AI)を使って、サイケデリックス医薬品が脳に及ぼす影響を解明しようとしている科学者もいる。モントリオールにあるマギル大学の研究チームは、音声アシスタントや検索エンジンで使われている自然言語処理を用いて、薬物使用者の体験談を書いた「トリップ・レポート」を研究した。この研究により、多幸感、不安感、あるいは世界との一体感など、幻覚剤がどのように特定の精神状態を引き起こすのかが明らかになるかもしれない。

研究チームのリーダーであるダニーロ・ブズドック准教授は、今回の研究が精神疾患に対する新しい医薬品の設計に役立つのではないかと期待している。「サイケデリック医薬品に関するその種の研究としては、これまでで最大規模です」とブズドック准教授は言う。

こうした研究における判断基準として一般的である臨床試験では、被験者に医薬品、あるいはプラセボ(偽薬)を無作為に投与し、両者の効果を比較する。

しかし、こうした試験には時間と費用がかかるうえ、参加人数も少なくなりがちだ。「何年もかかりますし、数百万ドルの費用がかかります。倫理の承認にいたっては、永遠の時間がかかるでしょう」とブズドック准教授は言う。

そこで、ブズドック准教授のチームは、自然言語処理を用いて、幻覚剤の使用に関する6850件の文書を評価した。各文書は、会員制医薬品情報機関であるエロウィド(Erowid)のWebサイトから得られたもので、ケタミン、MDMA、LSD、シロシンを含む27種類の薬物のいずれかを、実験室で実施する実験の一部ではなく、実際の現場で摂取した人によって書かれたものである。

ブズドック准教授のチームはこのデータを、各医薬品が脳内のどの受容体と相互作用するかという記録と統合。特定の薬物体験に関連する言葉が、どの神経伝達物質の受容体と結びついているのかを特定した。例えば、「空間」「宇宙」「意識」「次元」「突破口」などの神秘的な体験につながる言葉は、特定のドーパミン、セロトニン、オピオイド受容体に結合する医薬品と関連していた。

ブズドック准教授は、今回のアプローチが医薬品開発の新たな出発点になる可能性があるという。理論的には、これらの受容体を標的とする医薬品は、サイケデリック医薬品体験の特定の側面を引き出すはずだと、同准教授は言う。この研究は3月16日にサイエンス・アドバンシス(Science Advances)誌に掲載された。

一方で、ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学のサイケデリックス神経科学者であるフレデリック・バレット准教授は、完全には納得していない。「人々は、自分が飲んでいる薬が何であるかを常に知っているわけではありません。現実の世界では、投与量は常によく調整されているわけではないし、現実の体験には自分でも十分に認識できないほど多くのバリエーションが存在します」。

ブズドック准教授のアプローチは、有益な精神状態を引き起こす医薬品の特定を目指すバイオテクノロジー企業であるマインドステート・ デザイン・ラボ(MindState Design Labs)のアプローチと似ている。同社の最終目標は、精神疾患の新しい治療法を開発することである。「素晴らしい論文だと思います」と、マインドステード・デザイン・ラボのディラン・ディナルドCEO(最高経営責任者)は言う。しかし同社のアプローチは、受容体のグループではなく、個々の受容体に焦点を当てることになる、と付け加える。

問題は、サイケデリックな体験のどの側面がメンタルヘルス上有益なのか、本当のところは誰にも分からないということである。例えば昨年発表された臨床試験では、 MDMAが重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の一部の人に有効であることが示唆された。しかし、だからといって、MDMAを遊びで摂取する人が、PTSDを発症しにくいということにはならない。

ポジティブな感情に富んだ薬物体験が人の気分を良くすると考えるのは直感的だ。だが、不安や悲しみといったネガティブな感情を体験することで、自分の心的外傷と向き合うことができるようになった人もいると、バレット准教授は言う。

トリップ・レポートの活用は貴重であり、従来の仕事を補完するものであると、バレット准教授は言うが、「この分析から得られるものは、慎重に管理された臨床試験やその他の実験で検証されなければなりません」と釘を刺す。

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生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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