KADOKAWA Technology Review
×
米国版編集長がNFT購入で遭遇した奇妙な体験
Ms Tech | iStock
I tried to buy an Olive Garden NFT. All I got was heartburn.

米国版編集長がNFT購入で遭遇した奇妙な体験

最新記事では、目まぐるしく変化するデジタルマネーの世界について、知っておくべきことを詳述している。米国版編集長であるマット・ホーナンも後学のためにNFTを購入しようとしたが、思いがけない出費となってしまった。 by Mat Honan2022.06.06

今やお金が奇妙なことになっている。

米国版5月/6月号の特集のテーマを決めていたとき、私はオリーブガーデン(Olive Garden:米国のレストランチェーン)が大好きな友人のケイティのために、オリーブガーデンのNFTを買うことにした。それはNFTをもっと理解しようとする試みでもあった。その「代替不可能なオリーブガーデン」は、実際にはレストランの写真にすぎず、それぞれ19.99ドルの値が付けられ、NFTの取引プラットフォームであるオープンシー(OpenSea)に掲載されていた。この金額はツアー・オブ・イタリー(Tour of Italy:オリーブガーデンの名物メニュー)のメニューの価格と連動していた。そのNFTは、実際のレストランチェーン「オリーブガーデン」とは関係がない(ただし、それぞれのNFTは実在の場所に対応している)。それでも、掘り出し物のように思えたのだ。

20ドルを突っ込もうとしたが、オープンシーはクレジットカードを受け付けなかった。取引を完了させるには、暗号通貨イーサリアムを購入する必要があったのだ。よし!ゲームに乗ろうと思った。イーサリアム(正確に言えばウォレット)を手にオープンシーに戻り、購入しようとした。しかし、その準備が整った時には、最初の出品はすでに売り切れていたようだった。値段は上がっていた。かなり上がっていた。私が見たのと同じツイッターのスレッドを見たであろう二次販売業者が、オリーブガーデンのNFTを転売しようとしている。私はあきらめきれずに、イーサリアムを買い足して再挑戦した。

そこで発見したのが、ガス代という、マイナーが取引を確認するために徴収するサービス料である。安かったので、低く見積もってしまった。取引はなかなか成立しなかった。オリーブガーデンの値段はまだ上がっていた。もう一度、今度は時価で取引した。成功だ!ケイティは喜んでくれるだろう。

ただし……あなたはNFTをプレゼントしようとしたことはあるだろうか? 送金するためには、さらにガス代を払う必要があったのだ。結局、最初は20ドルだと思っていた冗談のような買い物が、後で75ドルに訂正されて、最終的に300ドル近くも払わされることになったのだ。

それでも友人のケイティは、ケンタッキー州ルイビルのショッピングモールにあるオリーブガーデンのJPEG写真を、イーサリアムのブロックチェーン上で所有することになったのだ。なんて素晴らしいプレゼントだろうか。

それは、ちょうど一週間後に本物のオリーブガーデンの弁護士がオープンシーに削除通知を送るまでは素晴らしいプレゼントだったのである。そして、この代替不可能なオリーブガーデンは海の藻屑と消えたのである。一瞬でパッと。

先ほども言ったとおり、今やお金が奇妙なことになっている。そこで今回の特集では、テクノロジーが我々の金融の未来をどのように形成するのかについて掘り下げた。

それがWeb3の基盤となる生体認証ベースのユニバーサル暗号通貨であろうと、ビットコインで建設された都市であろうと、現金に取って代わりつつあるデジタル通貨であろうと、アイバイイング(iBuying)が住宅市場を一変させようとしている方法であろうと、テクノロジーは我々の購入と消費と節約の方法を根本的に変えつつある。ギャンブルをする方法さえもだ。

この特集をお読みいただくことで、現在について何か新しい発見があり、それによって将来について理解を深めて準備することに役立てば幸いだ。ガス代の節約にもなるかもしれない。

人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
マット・ホーナン [Mat Honan]米国版 編集長
MITテクノロジーレビューのグローバル編集長。前職のバズフィード・ニュースでは責任編集者を務め、テクノロジー取材班を立ち上げた。同チームはジョージ・ポルク賞、リビングストン賞、ピューリッツァー賞を受賞している。バズフィード以前は、ワイアード誌のコラムニスト/上級ライターとして、20年以上にわたってテック業界を取材してきた。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Why it’s so hard for China’s chip industry to become self-sufficient 中国テック事情:チップ国産化推進で、打倒「味の素」の動き
  2. How thermal batteries are heating up energy storage レンガにエネルギーを蓄える「熱電池」に熱視線が注がれる理由
  3. Researchers taught robots to run. Now they’re teaching them to walk 走るから歩くへ、強化学習AIで地道に進化する人型ロボット
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る