KADOKAWA Technology Review
×
データセンターが都市に静かに戻ってきた理由
Library of Congress
コンピューティング 無料会員限定
Energy-hungry data centers are quietly moving into cities

データセンターが都市に静かに戻ってきた理由

テック企業はデータセンターを郊外だけでなく、人口密集地の中心部にも開設している。エンドユーザーが遅延に対して不寛容になってきているからだ。しかし、大量の電力を消費し、大量の熱を発するデータセンターを都市部に置くには課題もある。 by Michael Waters2022.06.28

1930年、電信大手のウェスタン・ユニオンは、新しいシンボルの仕上げに取り掛かった。ロウアー・マンハッタン、ハドソン通り60番地にあるアールデコ調の24階建てビルである。まもなく、ケーブル、空気圧チューブ、そしてローラースケートを履いた30人の従業員がリノリウムの床を疾走して、毎日100万通以上の電信がビル内外を行き交うようになった。

現在では、このビルのほとんどが広大なコンピューター・サーバー・ホールになっている。クラウドの物理的な体現だ。テレビ番組のストリーミング、ファイルのドロップボックス(Dropbox)へのアップロード、Webサイト閲覧しているとき、あなたはおそらくこのようなデータセンターの処理能力に頼っているはずだ。主な人口集中地やその近郊にデータセンターを構えるビルは増えつつあり、業界用語では「コロケーション・センター」と呼ばれている。ハドソン通り60番地のビルには何百もの企業が入居しているが、これもコロケーション・センターの一つである。

データセンターというと、電気代が安く税制優遇措置のある田舎に作られた巨大なサーバー・ファームを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。グーグル、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、マイクロソフト、メタ(Meta)といった大手テック企業は、バージニア州北部やオレゴン州ヒルズボロなどに数百万平方フィート相当のサーバー・スペースを置いている。しかし現在では、遅延を短縮するべくネットワークのノードを都市部に組み込む企業が増えている。たとえば、ロサンゼルスのワン・ウィルシャー・ビル(One Wilshire Building)にはかつて法律事務所のオフィスが置かれていたが、現在では米国とアジア間のインターネット・トラフィックの3分の1を束ねている。

素人目には、都市部に置かれたこのような物理的インターネット・ノードは、おそらく大したものとは映らないだろう。これは意図的なものだ。世界市場の10.9%を占めるコロケーション・データセンター最大手のエクイニクス(Equinix)は、一般的に注目を浴びないようにデータセンターを運営している。ダラスでは、市の中心部から少し離れたところに広大な工業用ビルを所有しており、データセンターのハブと私立大学の本部が入っている。東京では、立ち並ぶ高 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. OpenAI says ChatGPT treats us all the same (most of the time) 相手の名前で回答が変わる?チャットGPTに潜むバイアス明らかに
  2. Trajectory of U35 Innovators: Hiroki Matsunaga 松永浩貴:「枠を超えた発想」が生み出す革新的なロケット推進剤
  3.  A data bottleneck is holding AI science  back, says new Nobel winner ノーベル受賞者・ベイカー教授が指摘する「AI科学」の課題
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者は11月発表予定です。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る