コンピューティング

Data Mining Reveals the Six Basic Emotional Arcs of Storytelling 物語の作り方は6つしかないことがビッグデータ解析で判明

コンピュテーショナル・ストーリー研究所の研究者が、物語を構成する感情曲線に6つの基本型があることを明らかにした。 by Emerging Technology from the arXiv2016.07.06

1995年、アメリカの小説家カート・ヴォネガットは、物語の形に関する自身の理論について説明した。講義中、黒板にいくつかの例を描画し、「物語の単純な形をコンピューターに入力できない理由はない」といった。「美しい形だ」

ヴォネガットは、小説家が何世紀にもわたって探求してきた考えをグラフで示した。物語は感情の弧をたどり、弧は異なる形を持ち、ある形は他の形よりも物語を伝えるのに適しているという理論だ。ヴォネガットは講義で「男が穴に落ち、穴から出てくる」という展開の基本的な弧から「男の子が女の子に出会い、女の子を失い、女の子を手に入れる」ような、より複雑な弧など、いくつかの弧を提示した。

物語をグラフで表したのはヴォネガットおそらく最初だが、物語をいくつかの型に分類しようとしたのはヴォネガットだけではない。2000年以上前にアリストテレスも物語の分類について思考をめぐらし、その他大勢もアリストテレスに続いた。

しかし、物語に現れる感情の弧は何種類あり、どんな形があるのか、見解は一致しない。基本的型は3つの説から、30以上の型があるとする説までさまざまだ。いずれにしても、物語をいくつに分類するかの数を、科学的に説明する方法はないのだ。

いま、バーモント州バーリントン市にあるバーモント大学コンピュテーショナル・ストーリー研究所のアンドリュー・レーガン研究員のチームにより、この不確定な状況が変わろうとしている。レーガン研究員のチームは、感情分析を用いて1700以上の物語の感情の弧を描き出し、データマイニングで最も一般的な弧を明らかにした。

「核となる6つの軌道を発見しました。この軌道こそ複雑な物語の基本要素を形作っています」

分析手法は単純だ。感情分析の背景にあるのは、言葉が読み手の感情に肯定的または否定的な影響を与えるとする考え方だ。つまり、文章に表れる言葉が、文章の感情値と、時間経過による感情値の変化の評価基準になる。したがって、物語の弧の形を評価するには、単に各瞬間における物語の感情の極性とその変動を計ればよい。

レーガン研究員は「言葉の窓」で感情の極性を分析することにした。文章のある範囲を「窓」を通して観察し、「窓」をずらしていくことで文章を読んだときの極性を計り、感情値がどう変化していくかの形を描いたのだ。レーガン研究員は、プロジェクト・グーテンベルク(米国版の青空文庫)から150回以上ダウンロードされた1700以上の英語のフィクション作品で感情値を計り、グラフを描いた。また、さまざまなデータマイニングを駆使することで、ついに、それぞれの作品にある異なる感情の弧を明らかにしたのだ。

研究結果も興味深い読み物になっている。レーガン研究員によると、データマイニングによって、より複雑な物語の構成要素になる、6つの基本的な感情の弧の存在がわかったという。さらに、データ・マイニングは、それぞれの種類の弧の、最も優れた作品も特定できる。

以下は、6つの基本的な感情の弧である。

  •  『地下の国のアリス』(ルイス・キャロル)など、立身出世物語に見られる、感情値の「一定して継続的な上昇」型
  • 『ロミオとジュリエット』(ウィリアム・シェイクスピア)など、悲劇に見られる、感情値の「一定して継続的な下降」型
  • ヴォネガットが説明した穴の中の男の物語のような感情値の「下降から上昇」型
  • 『イカロス』(ギリシャ神話)など、感情値の「上昇から下降」型
  • 『シンデレラ』(グリム童話等)など、感情値の「上昇⇒下降⇒上昇」型
  • 『オイディプス』(ギリシャ神話)など、感情値の「下降⇒上昇⇒下降」型

研究チームは、感情の弧とダウンロード数の相関関係を調べて、どの型の弧に人気があるのかも検証した。すると、最も人気が高いのは、イカロスとオイディプス型の物語と、複数の基本的な構成要素が順次使用された複雑な型の物語だとわかった。特に、2つの連続的な穴の中の男の弧を持つ物語と、シンデレラの弧の後に悲劇が続く物語が一番人気である、とチームは供述している。

もちろん多くの物語は、「言葉の窓」の解像度を高めれば複雑な形になる。レーガン研究員の手法では、段落単位で起こる感情極性の変化は捉えられず、物語が描く大きな感情の弧しか捉えられない。(レーガン研究員の物語の弧はここから参照できる

この研究は、基本的な物語の弧の存在に対し、史上初の経験的証拠を提示した意味で興味深い。また、この研究結果は、物語の本質と人の心を引き付ける力について、重要な知見を与えてくれる。また、より野心的な研究の土台にもなる。レーガン研究員のチームは、おもに英語のフィクション作品について検証したが、感情の弧が言語や文化によってどう異なるのか、時代とともにどのように変化したのか、また、ノンフィクション作品はどのような弧を描き、何種類の弧があるのかを調べるのも面白いだろう。

ヴォネガットがシカゴ大学人類学における修士論文で物語の形の理論の概要を示したのは有名な話だ。論文が即座に拒絶されたのは「内容があまりにも単純で、面白味にあふれていたからだ」とヴォネガットは語っていた。今日、この研究についてヴォネガットは間違いなく愉快に思うだろうが、驚きはしないだろう。

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